2022年6月号
月刊ゴルフ場批評56
「伊豆ハイツゴルフ倶楽部(静岡県)」批評
カテゴリ:月刊ゴルフ場批評
今回はかつて「伊豆ゴルフ倶楽部」という名称で、往時は米国ゴルフダイジェスト社のベスト100コースに選出されたこともある「伊豆ハイツゴルフ倶楽部」だ。
静岡県の伊豆半島のほぼ中央、修善寺温泉から約30分という立地。以前訪れたのは10年前。名コースといわれながらアクセスの悪さもあって経営難に陥り、コースも荒れ果ててひどい状況だった中、2013年には閉鎖が決まり惜しむ声が多かった。
その後、しばらく存在を忘れていたが、14年にはマレーシア系の企業に買収され、今の名称に変わり営業を再開していたという。コースは標高543㍍の伊豆高原にあるから、確かにハイツ(高原)ではあるものの、日本人にとってはマンションみたいな名前だよな。
それでも山奥に突如出現するリンクスランドを初めて目にしたときは衝撃だったわけで、行かない手はない。都内を早朝に出て新東名を経由し、伊豆縦貫道修善寺インターまで高速道路だから、だいぶ近くなった。しかし、ナビを設定して着いてみたら、コースのはるか手前。そこから5㌔、15分近く山道を登り続け、やっとハウスに着いた。ぶつける相手がいない怒りだ。
バブル期に造られた御殿のようなクラブハウスは、多少くたびれてはいるものの健在。
美空ひばりが長期滞在していたという隣接のホテルも、しっかり営業しているようだ。以前に訪れた時のような、ひどい運営ではなさそうだから一安心。
1番から5番までは、山の斜面に沿って段々に上っていくレイアウト。ただ、上り傾斜はインターバルで吸収しているから、ホールそのものはほぼフラットだ。
しかも、立ち木が1本もない「茅場」といわれる土地に作られているため、山奥なのに印象は荒涼たるリンクスそのもの。ポットバンカーやグラスバンカー、細かなマウンド、ソールのできるデザート(砂漠)エリアなどがあり、1つのグリーンを2つのホールで共有するなど、スコットランドのテイストを多く取り入れている。
打ち進むにつれて標高が高くなり、眺望もどんどん良くなる。この日は真っ白に雪を被った富士山がくっきり姿を現してくれた上に、その富士を囲むように雪を頂いた南アルプス連峰や丹沢、箱根の山々まで見渡せる大パノラマの贅沢さ。
グリーンやフェアウエーバンカーなども整備されていて、コース本来の美しさが蘇っている。
凛とした空気、爽やかに吹き渡る風も高原ならでは。他にはない唯一無二の「天空のリンクス」が復活してくれて良かったが......。
しかし、インコースが残念なのだ。
趣がガラリと変わった林間丘陵タイプだが、ハウスより低い位置になっているから元々眺望がよくない上、樹木の成長で視界を遮るようになってしまっている。
インも変化に富んだ愉しいレイアウトなのだから、しっかり間伐してほしい。ナビの案内終了後も15分かけてコースに来たんだから......(笑)。
●所在地 静岡県伊豆市地蔵堂845-67 ●TEL. 0558-83-3500 ●開場 1986(昭和61)年8月15日 ●設計者 加藤俊輔 ●ヤーデージ 18ホール、7223ヤード、パー72