ZAITEN2022年010月号
常軌を逸する暴言の数々で社内は疲弊
日本電産「永守重信会長」のパワハラ老害支配
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今年CEOに復帰した永守重信会長
永守重信(78)は、1代で日本電産を世界トップシェアの企業に育て上げた創業会長である。優秀な技術を持つが経営不振に陥った企業を買収し、子会社化して再建させるM&Aの手法で知られる。人員削減は行わず、永守が個人で筆頭株主となり、同時にその会社の会長にも就任、直接経営陣を送り込む。実際、買収した会社はほぼ1年以内に黒字化させてきた。 永守が標榜する経営哲学は「情熱・熱意・執念」「知的ハードワーキング」「すぐやる、必ずやる、できるまでやる」の3つ。買収先の再建にあたっては、まず意識改革、企業カルチャーを変えることを求める。さらには、競合企業が追随できない圧倒的スピードを求めて実践させていく。
永守は過去のインタビューで、常々「仕事が一番楽しい」と答え、1日16時間、年間365日、元日の午前を除いて働くと公言していた。また「社員全員が休日返上で働く企業だから成長できるし給料も上がる」と、同社の成長の原動力が従業員の「ハードワーク」にあるとの認識であり、労働環境の過酷さはかねてより懸念されていた。しかしM&Aした海外企業での見聞を通じて、生産性を重視する方向へと考え方を変え、将来の残業ゼロを目指すことを宣言。15年下期から働き方改革の取り組みを開始し、「働き方改革着手から1年弱で残業時間半減」17年には「在宅勤務制度、時差勤務制度、時間単位年次有給休暇制度導入」なども実現。「働き方改革への1000億円投資」も宣言した。
しかし、永守が陣頭に立って急成長を遂げる中、有価証券報告書では「永守依存」が事業リスクとして明記されるほど、後継者問題が深刻だった。昨年6月、日産自動車副CОО(最高執行責任者)の経歴を持つ関潤がCEО(最高経営責任者)となり、新型コロナの感染拡大や米中対立といった環境下でも、業績を成長させることに成功。7月20日に行われた決算発表では、過去最高益をマークしたと発表した。
燻り続ける後継者問題
以上が世間で知られる日本電産の〝表の面〟である。しかし、その実情は大きく異なるようだ。生え抜き社員や幹部社員を中心に離職が相次ぎ、働き方改革以前に逆戻りしたかのような指令が出されているという。今般、「組織崩壊の危機」にあるとして、かつて同社で部署リーダーを勤めた経験を持つA氏から内情をヒアリングすることができた。同社の〝現実〟を報告したい。
永守は関にCEОの座を譲り自らは会長に退いたが、1年も経たない今年4月、関をCООに降格した上で自ら会長兼CEОに復帰した。永守の言い分としては、「知的ハードワーキング」「すぐやる、必ずやる、できるまでやる」といった企業文化が、関を迎えて崩れ、収益が出なくなったというものだった。しかし市場はこれを「事業継続リスクの再発」と嫌忌し、株価は低下。自身がCEОに復帰すれば株価が回復すると信じていた永守にとっては大きなショックであったという。
A氏は語る。 「株価低迷の理由はやはり後継者問題です。永守依存から脱却できていない事に対する市場の評価だと思います。加えて成長の鈍化、人材の流出や内部崩壊など数多くあります。永守のスタイルは昔から変わりませんが、株価低迷に対する焦りを感じます。とにかく株式時価総額ランキングへの拘りが強く、なんとか株価を回復させるために業績回復に躍起になっています。なりふり構わぬ人事や罵詈雑言が増えました。人は離れ、負のスパイラルに陥っています」
......続きはZAITEN10月号で。