ZAITEN2022年011月号
【スポーツ対談】東京2020五輪
玉木正之 ×春日良一「スポーツを食い物にした五輪と電通」
カテゴリ:インタビュー
かすが・りょういち―1955年、長野県生まれ。上智大学哲学科卒。日本体育協会、日本オリンピック委員会を経て、1995年独立。スポーツコンサルティング会社「ゲンキなアトリエ」を設立。同代表。スポーツイベントのプロデュース、アスリートサポートを手掛ける。オリンピック日本代表選手団渉外、JOC国際渉外として、国際オリンピック委員会、国際競技連盟、各国オリンピック委員会、五輪大会組織委員会と渉り合った経験と人脈を礎に、1995年、戦火のサラエボでのスポーツイベントをプロデュースするなど、オリンピズムの実践にチャレンジしている。スポーツ的に考えることで、希望のある社会構築を目指し、1998年から「スポーツ思考」を主筆している。
玉木 東京2020五輪組織委に関する贈収賄事件の捜査が広がり続けてますが、春日さんは事件の一報を聞いたとき、どう思われましたか?
春日 私が最初に思ったのは竹田恒和元組織委副会長(元JOC会長)のことですね。フランスの司法当局は、ロシアがドーピング疑惑を揉み消すために世界陸上連盟のラミン・デイアク元会長へ渡したカネの流れを調査していた。すると東京五輪招致委からのカネの流れも発見。招致委の理事長だった竹田氏からディアクへのカネの流れを疑った。その結果、竹田氏は逮捕を怖れて外国へ出られなくなり、JOC会長とIOC委員も辞任しました。この一件では日本の司法は動かず、そのうちディアクは去年の12月に亡くなりましたが、息子のパパマッサタ・ディアクが生きていてフランス当局は捜査を継続。今回の元電通専務の高橋治之氏の逮捕が、この事件につながるのかどうか? 私が最初に頭に浮かべたことはそれでした。
玉木 東京五輪の前にも、リオ五輪招致委の会長で組織委会長も務めたカルロス・ヌズマンが、ディアク親子に約2億円を渡して五輪開催地投票のアフリカ票の取りまとめを依頼したことを、リオの司法当局が贈賄と認定して逮捕。一審で禁固30年9カ月の判決が出ました。それと同額のカネが日本の招致委からも渡っていた。
春日 リオの場合はディアク個人への露骨なカネの手渡しでしたが、東京五輪招致委はブラック・タイディング社という会社を通し、カネがディアク親子に渡ったかどうかは不透明です。組織委理事として高橋氏が自分のコンサル会社「コモンズ」を通してカネを受け取った容疑で逮捕されたのと、よく似たやり方ですね。
玉木 今回の事件は、IOCのオリンピック商業化の問題と、日本国内のスポーツ界の問題に分けて考える必要があると思います。
......続きはZAITEN11月号で。