ZAITEN2022年012月号
【対談】佐高信の賛否両論
佐高信×田中優子「自己責任の社会」は完全に失敗している
カテゴリ:インタビュー
たなか・ゆうこ―1952年、神奈川県横浜市生まれ。法政大学社会学部教授。社会学部長等を経て法政大学総長(2021年に退任)。国際日本学インスティテュート(大学院)教授。専門は日本近世文化・アジア比較文化。研究領域は、江戸時代の文学、美術、生活文化。『江戸の想像力─18世紀のメディアと表徴』(ちくま学芸文庫)で芸術選奨文部大臣新人賞、『江戸百夢』(ちくま文庫)で芸術選奨文部科学大臣賞・サントリー学芸賞受賞。2005年度紫綬褒章。近年はTBS「サンデーモーニング」のコメンテーターとしても活躍。近著に『カムイ伝講義』(小学館)『グローバリゼーションの中の江戸』(岩波書店)『遊郭と日本人』(講談社)など多数。
佐高 田中さんとは新宿駅西口の国葬反対集会以来ですか。紺色の着物を着て演説する姿がNHKに映されていましたね。2021年の3月に法政大学の総長を退任したとはいえ、余計な心配かもしれないけれど、私が反対集会に行くのと田中さんが行くのとでは違いますよ。
田中 私は違うとは思いませんが、確かに総長の任期中であったらそもそも反対集会の場に行くことができなかったでしょうね。どこで写真を撮られるかわからないですから。
佐高 やはり総長を終えて、衣を脱いだという感じですか?
田中 というよりも「私」の区分けがきちんとできるようになったかな。総長の時には自分の中で「個人の私」と「総長の私」が分かれていたんですが、存在としては二つに分けられませんから、どうしても「総長の私」の方へ寄っていかなくてはならない。それが今は「個人の私」としての責任さえ取ればよくなったので、大変活動しやすくなりました。仮に大学へ苦情が来たとしても、職員は「田中優子は本学とは関係ありません」とはっきり言えますし。
佐高 7年間の総長時代を振り返って、その役は自分に似合っていたと思います?
田中 いいえ、自分に合った仕事だと思ったこともありませんし、そもそも合う合わないで考えることではないです。
佐高 でも、とかく在任中はいろいろとあったでしょう。総長としての提案にも異論が出たはず。
田中 一番は財政問題で教職員の人件費構成をいくらか見直そうとしたことですね。理事会として提案をぶつけ、たくさんの反論を受け止め、とにかく議論を重ねた。年単位で熟議したんです。結果として、教員自らが経費削減案を考えることにつながりました。
......続きはZAITEN12月号で。