ZAITEN2022年012月号
月刊ゴルフ場批評62
「奈良国際ゴルフ倶楽部」批評
カテゴリ:月刊ゴルフ場批評
久々の関西遠征は初の「奈良国際ゴルフ倶楽部」。「国際」とつくコースは個人的には印象がよくないのだが、同GCは「関西オープン」や「日本シニアオープン」、「日本アマ」など数々の公式競技の舞台となってきた。会員権の額も関西トップクラスといわれる名門なので、ちょっとワクワクする。
......で、結論。関東の名門には見られない不思議なコースだった。何だろう、このモヤモヤは。
まずはクラブハウスと立地。コースのアウト、インを隔てるように幹線道路の「阪奈道路」が貫いており、ハウス前は道路にかかる陸橋。古都・奈良らしく若草山や生駒山、東大寺の大仏殿などを望む絶景もウリのコースだが、ゴルフ場に来ながら眼下にはクルマの波で、こんな造りにする発想にビックリさせられた。
プレースタイルにも驚きだ。もともと歩きプレーだったが、今年7月に電磁誘導の乗用カートを導入。しかし、マスター室前ではキャディたちが、昔ながらの電動式手押しカートにキャディバッグを積んでいる。スタートホールに続く道には、電磁誘導の乗用カートの列ができでいるが、そこにはキャディバッグは積まれていない。
スタート時間が近づき、疑問はやっと解消した。乗用カートはプレーヤーの移動のみに使われ、キャディは歩きで電動手引きカート、もしくは立ち乗り式のカートでプレーを進めていくのだ。 なぜか。電磁誘導カートはフェアウエーに道を造れないから、サイドのラフを利用する。 ところが、手押しカートでフェアウエー中央を歩いてきたキャディにとっては、クラブの受け渡しなどのための移動の負担が増えるため、どうしても敬遠される。
一方、歩きプレーを嫌がる昨今のゴルファーの声も無視できない。そんな双方の折衷案として、「手押しカート&乗用カート併用」という珍しいスタイルに落ち着いたという。プレーヤーは歩いてもいいし、空のカートに乗って移動してもいい。古都らしく何とも贅沢だな......。
コースはアウト、インともフェアウエーは広いがブラインドホールが多い。キャディは落下地点に先行して行ってしまうので、使用済みのドライバーは乗用カートに置いておく流儀になっている。 いろいろと独特で初めてだと面食らうぞ。
気になったのはグリーン周りだ。数ホール打ち進んでいくと、名匠・上田治作品としては単調というか、バンカーも穏やかでスリルに乏しい。オリジナルデザインでは2グリーンだったコースを、2013年にワングリーン化。しかし、サブグリーンだった場所が明らかにそのまま残っているなど、どうもグリーン周りが間延びしたホールが多い。
改修にあたっては、プロのアドバイザーや名シェイパーも招聘しているそうだが、スペシャリストが存分に腕前を発揮できなかった理由でもあったのか? それはともかく、サブグリーン跡の処理はこれからというホールもあるらしいから、せっかくの名コースだけに手応えのあるグリーン周りにしてほしいものだ。
●所在地 奈良県奈良市宝来5-10-1 ●TEL. 0742-45-4101 ●開場 1957(昭和32)年11月3日 ●設計者 上田治 ●ヤーデージ 18ホール、7055ヤード、パー72