ZAITEN2022年012月号
自民党の「イエ中心主義」によって経済政策に利用される「女性活躍」
【インタビュー】安藤優子「自民党の女性認識」
カテゴリ:インタビュー
自民党の女性認識「イエ中心主義」の政治指向 明石書店/2500円+税
安藤優子 ジャーナリスト
あんどう・ゆうこ―1958年生まれ、上智大学卒。数々の報道番組で取材レポートを担当。1986年にはギャラクシー賞個人奨励賞を受賞。東京大学大学院人文社会系研究科客員准教授 (2009年4月1日~9月30日)。グローバル社会学博士号取得(19年9月)。直近では「直撃Live グッディ!」総合司会(15年〜20年)を務めた。
―報道の分野でキャリアを築かれてきた安藤さんが、大学院に12年通ったうえで、社会学研究者として上梓されたのが本書です。
研究の原点は、まさに自分が生きてきた報道の世界で女性がキャリアを積み上げて行くにあたり、目に見えない壁や、ガラスの天井の存在を感じてきたことにあります。一体これは何なのか。それを研究によって可視化し、女性に注がれる視線や、期待されてきた役割、社会における女性のあり方などを具体化したかった、というのが研究に取り組んだ動機です。
例えば安倍政権は「女性が輝く社会の実現」を政策の柱に据えてきました。しかしその主たる目的は経済政策であり、労働政策。必ずしも女性個人をリスペクトするものではありませんでした。なぜこうなってしまうのか。まずは交通整理をしたい、と本書では第一部で「戦後長らく政権与党である自民党の女性政策」を分析し、政党戦略としての「女性認識」を浮かび上がらせました。 ―政策に関する文書からは1970年代の「日本政府の女性観」が透けて見えて、そのあまりの「古さ」に絶句しました。
私も驚きました。大平政権のブレーンだった学習院大学の香山健一教授は当時、『日本の自殺』(75年)にこう書いています。 〈便利さの代償は家庭の主婦にとっても決して小さなものではなかった。インスタント食品、既製服などの便利さの代償として、家族のために心を込めて食事を作り、セーターを編む喜びを忘れた主婦たちがいかに多いことか〉
また、全12巻になる自民党の『研修叢書』第8巻の「日本型福祉社会」(79年)では、国家に依存しない自立自助型福祉モデルの提言として、「家族と家庭は国家に代わって個人の面倒を見るべき」とし、次のように述べています。 〈日本型社会の良さと強みが将来も維持できるかどうかは、家庭のあり方、とりわけ「家庭長」である女性の意識や行動の変化に大いに依存している。......女性が家庭の「経営」より外で働くことや社会的活動にウェートを移す傾向は今後続くものと思われるが、それは人生の安全保障システムとしての家庭を弱体化するのではないか〉
......続きはZAITEN12月号で。