ZAITEN2023年001月号
フクイチ廃炉コストは肥大化する一方―
【特集】東電「原発再稼働」でも険しい再建への道
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「燃料価格の高騰が続いている上、急激な円安で収支が悪化しており、経営合理化では追いつかない。規制料金を含めた全ての低圧(家庭向け)の料金メニューの見直しを検討させていただきたい」
東京電力ホールディングス(HD)が2022年11月1日に開いた22年4~9月期連結決算発表の記者会見。副社長の山口裕之は沈痛な面持ちを装いつつ、東日本大震災・福島第1原発事故後の12年9月以来となる家庭向け料金の本格値上げを〝通告〟した。わずか1カ月余り前に法人向け料金の23年4月からの値上げを発表した際には「家庭向けの値上げは考えていない」と大見得を切っていただけに、舌の根も乾かぬうちに約束を反故にされた契約者の間からは非難の声が上がった。
とは言え、HD社長の小早川智明ら経営陣からすれば、家庭向けも含めた全面値上げは既定路線。同4~9月期連結決算で1433億円もの最終赤字に転落(前年同期は866億円の黒字)し、23年3月期の業績見通しの公表を見送らざるを得ないほどの苦境に陥った中、値上げなしには福島原発事故の賠償や廃炉などの資金さえ捻出が困難な状況だった。
関係筋によると、東電が「家庭向けの値上げは考えていない」と心にもない虚言を弄して煙幕を張っていたのは、首相の岸田文雄が10月末に物価高騰や円安進行を受けた総合経済対策の目玉として電気代負担軽減を打ち出す前だったためという。「家庭や企業の負担軽減」とは名ばかりで、税金による補填で契約者の怒りを抑え、電力会社の値上げをアシストしたい思惑の官邸との「連携プレー」、所詮は政権と業界の出来レースのように映る。特に東電の場合、福島原発事故後に税金約1兆円を投入し実質国有化した経緯があり、経営危機に歯止めを掛けることが東電救済策を主導してきた首相秘書官の嶋田隆(1982年旧通商産業省、元事務次官)にとっては死活問題だ。
......続きはZAITEN1月号で。