ZAITEN2023年01月号
月刊ゴルフ場批評63
「川越グリーンクロス」批評
カテゴリ:月刊ゴルフ場批評
埼玉県を流れる荒川流域の河川敷で以前から気になっていた「川越グリーンクロス」。
土手沿いの道路からコース一帯を見渡せるが、河川敷なのにこれが〝真っ平〟じゃないのだ。
フェアウエーに急勾配があるわけじゃないが、砲台グリーンが存在し、そのグリーンにも遠くからでも分かるほどの大きなうねりがある。樹木は大きく、植栽もキレイに整えられている。リンクス風の河川敷とは異なる印象だ。
同コースは2024年3月で営業を終了。国の治水事業の対象エリアになり用地を国に返還、なくなる前に行かねばという巻。
駐車場やクラブハウスは土手の外側にあり、コース内には土手の階段を登って行く。決して楽な階段ではないが、この土手登りが悪くない。小さい花々が群生する土手の斜面と、上方に広がる青空が視界に広がり、一瞬で非日常空間に放り込まれる感覚を持つ。
そして、登り詰めると河川敷一杯に広がるゴルフコース。土手越えのコースでなければ味わえないスペクタクルだ。
そのスペクタクルはまだ続く。土手を降りていくと、バッグ置き場の先にあるのは渡し舟の船着き場。コース側へは約4分の船旅だ。川面に出ると、鬱蒼と樹木が茂った中州が目の前に迫り、タイかベトナム辺りに来た気分だぞ。
バッグを担いで下船すると、乗用カートの列がお出迎え。それぞれのスタートホールへ向かう。
フェアウエーはフラットでとにかく広く、ティフトン芝のメンテナンスもバッチリ。
両サイドは灌木や大きな柳、クスノキなどでセパレートされ、リンクスと林間のテイストが混じった趣だ。
驚くのがグリーンと形状だ。河川敷にあるまじき高速ベントグリーンのうえ、砲台や段グリーンなど変化に富んでいる。あるパー3では、ピンが段を上がったすぐ上に切られていて、少しだけショートした球は15㍍以上も戻ってきていた。見ていると前の組も全員4パット以上。スペクタルもこうなると、ちょっとやりすぎだろ。
全体的にレイアウトはこだわりが随所に見られて面白い。セカンド地点に川が横切る難ホールもあって、しっかりボールのポジショニングを考えないと痛い目に遭うが、いただけないのはハーフ休憩のシステムだ。ハーフでランチをとる通常プランだと、また船に乗って土手を越えるという、ハウスまでの行き来をしなければならない。これだけで30分近くかかるため、昼休憩1時間でも食事時間は実質30分弱、実に慌ただしい。どうやら常連さんは昼食をとらずにスループランでサクサク回っているようだ。
もう一つ。フェアウエーが広いだけに自走カートは取り回しが面倒だが、数カ所、カート道が交差するホールがある。ティショットを終えてカートを走らせると、左前方から打ってくる組と鉢合わせ。慣れてないと事故を起こしてもおかしくないから慎重に。
課題はあるとはいえ、コロナ禍における健康増進のためにも、こういった手軽なコース、必要だと思うのだが......。
●所在地 埼玉県川越市古谷本郷865-1 ●TEL. 049-236-1211 ●開場 1967(昭和42)年8月4日 ●設計者 東急建設 ●ヤーデージ 27ホール、9336ヤード、パー107