ZAITEN2023年01月号
【スポーツ対談】
玉木正之 ×平尾剛「日本のスポーツとアスリートを堕落させた戦犯は誰だ!?」
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ひらお・つよし―1975年大阪府生まれ。神戸親和女子大教授。専門はスポーツ教育学、身体論。 元ラグビー日本代表。 現在は、 京都新聞、プレジデントオンライン、みんなの シマガジンにてコラムを連載。著書・監修に 『合気道とラグビーを貫くもの』(朝日 新書)、『ぼくらの身体修行論』(朝日文庫)、『脱・筋トレ思考』(ミシマ社)など多数。
玉木 平尾さんは、2020年東京五輪の開催前から、オリンピック(以下、五輪)そのものに反対の意志を表明されていましたね。
平尾 はい。最初は17年に連載しているウェブマガジンに開催に反対で、返上するべきだと、はっきり書きました。五輪が商業化して肥大化した結果、スポーツそのものをスポイルしてしまっている。そんな大会は必要ないという意志を示したのです。それは僕一人の意見ではなく、前の年には神戸大学の小笠原博毅先生と成城大学の山本敦久先生による『反東京オリンピック宣言』(航思社)という本も出版されていましたし、東京五輪に反対している人は少なくなかった。
玉木 平尾さんの周囲での、五輪反対論に対する反応は?
平尾 はっきり言って無風状態でした。開催反対なんて言って大丈夫か? と僕の身を案じて心配してくれる人はいました(笑)。けれども、そういった方々は五輪には賛成でも反対でもなく、五輪について触れないようにしていたみたいです。そのことは、とても気持ちが悪かったですね。
玉木 私は、初めは東京五輪招致賛成で、東京五輪をきっかけに日本の軍隊調の「体育」が自主的な「スポーツ」に変わればいいと考えていました。が、森喜朗組織委会長の女性蔑視発言など、不祥事の続出にウンザリさせられ、日本という国は五輪で金儲けを考えているだけで、開催する資格がない、と結論づけました。
平尾 五輪開催に賛成なら、理由を説明されれば議論を深めることもできたのに、メディアも含めてそういった意見も反応もないまま、開催に向かって走ってしまった。そこがなんとも不気味でしたね。
玉木 五輪反対の旗幟を鮮明にした結果、何かマイナスになったこととか、被害はありましたか?
平尾 SNSでの匿名の誹謗中傷は、かなり酷かったです。それは我慢すれば済むことで、精神的には鍛えられました(笑)。大学に電話が来ることもなかったし、仕事への影響もなく、それは逆に残念でした。きちんと抗議や反論があれば、五輪やスポーツについての議論を深められたはずですからね。
......続きはZAITEN1月号で。