ZAITEN2023年02月号

【新春対談 佐高信 賛否両論】

佐高信×田原総一朗「ジャーナリストは空気を壊すのが仕事」

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たはら・そういちろう―1934年、滋賀県生まれ。早稲田大学文学部卒業。岩波映画製作所、テレビ東京を経て77年フリーに。テレビ朝日系で87年より『朝まで生テレビ』、89年より2010年3月まで『サンデープロジェクト』に出演。98年ギャラクシー35周年記念賞(城戸賞)を受賞。10年4月よりBS朝日にて「激論!クロスファイア」開始。02年4月より早稲田大学で「大隈塾」を開講。(05年4月より17年3月まで、早稲田大学特命教授)著書に『日本の戦争』(小学館)、『誰もが書かなかった日本の戦争』(ポプラ社)、『堂々と老いる』(毎日新聞出版)、『自民党政権はいつまで続くのか』(河出新書)など多数。

佐高
 先日、田原さんと私の共通の友人である早野透(元朝日新聞編集委員)が亡くなりました。田原さんとも葬式で一緒になりましたが、今や早野透のような存在がメディアからいなくなりましたよね。

田原 そう思う。僕はかれこれ10年間ほど早野と若宮啓文(元朝日新聞主筆)との3人で定期的に会談をしていた。佐高さんも知っているけど、僕が早野の仕事で一番感心したのは、彼が田中角栄を評価する本を書いたことだね。

佐高 ええ。早野は東大の恩師である丸山眞男にも「角栄は民主主義です」と話していたという。

田原 ロッキード事件で日本中が田中の悪口を言っていたのに、早野は田中を評価した。しかも、その後が面白い。田中は、本を出したお礼に早野へ金を渡そうとしたらしいんだよ。おそらく100万円くらいじゃないだろうか。早野はそれを当然のことながら断った。しかし、そのことを誰にも言えなかった。なぜか。同僚、先輩、後輩たちを裏切ることになるからだ。

佐高 なるほど。角栄から金をもらっている記者がいますからね。ただ、早野の前に金を断った人がいたと聞きますよ。田原さんと早野の共通点は角栄を擁護したことだけども、田原さんも角栄から金を渡されたことがあるでしょう。

田原 うん。僕はそれを隠さず話してる。僕が『文藝春秋』でインタビューをした時ことだ。1980年の暮れ。立花隆の「田中角栄研究 その金脈と人脈」を契機に金権批判の波に飲まれて74年に首相を辞めた田中が、6年ぶりにメディアに登場。僕は田中に直接、世の中で初めていろんなことを聞いた。
 5時間に及んだインタビューが終わり、同席した文藝春秋の編集長とお礼を言い、僕たちは席を立とうとした。すると、田中は分厚い封筒を差し出した。「おい、とっとけ」と。1万円札が100枚入っていた。  僕は咄嗟に思った。その場で突き返したら確実に喧嘩別れになる。一旦は受け取ったフリをして、後で返上するのがいいだろう、と。実際、その足で平河町の田中事務所に出向いて「お返ししたい」と申し出た。そうしたら、田中の秘書の早坂茂三が「返したらオヤジ(角栄)は怒るぞ」と言った。
 当時、田中は自民党だけでなく、全政党に多大な影響力を有していた。つまり「金を返しでもしたら、お前は今後、政治の取材が一切できなくなる」と告げられたんだ。僕は仕方がなく最敬礼をして、その場を去らざるを得なかった。

......続きはZAITEN2月号で。

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