ZAITEN2023年03月号
【対談】佐高信の賛否両論
佐高信×前川喜平「統一教会と清和会に壊される教育の悲鳴」
カテゴリ:インタビュー
まえかわ・きへい―1955年奈良県生まれ。1979年、東京大学法学部卒業後、文部省(現・文部科学省)入省。大臣官房長、初等中等教育局長、文部科学事務次官などを歴任、2017年1月退官。事務次官時代、当時の安倍晋三首相と親密な関係があったとされる学校法人加計学園の獣医学部新設問題で「総理の意向があった」と記された文書の存在を認め、「公正・公平であるべき行政が歪められた」として公然と政権批判をする姿勢が一躍話題となる。現在、現代教育行政研究会 代表を務め、その傍ら、自主夜間中学スタッフとしても活動。おもな著書に『面従腹背』『権力は腐敗する』(いずれも毎日新聞出版)、『日本の教育、どうしてこうなった? 総点検・閉塞30年の教育政策』(児美川孝一郎との共著/大月書店)など。
佐高 今日は前川さんに、古巣である文部省(現・文部科学省)について、あらためてお伺いしたいと思っています。
前川 入省した頃の話から始めると、最初は「ここはなんちゅうところか!」と呆れましたね。仕事をする気がないような人がたくさんいて、空気がドロッとした感じで澱んでいる。遅れず、休まず、働かず、みたいな役人がゴロゴロしている場所だったんですよ。
佐高 窓を開けて空気の入れ替えをしてないわけですね。
前川 そうそう(笑)。実際、私と違う部署に配属された同期は先輩から「仕事はできるだけ受けるな」と言われたと聞きました。「何か頼まれたら、『それはうちの仕事じゃない』とまず言ってからその理由を考えろ」と。こういうことを先輩が後輩に教えるような組織だった。
佐高 わかりやすくダラけたお役所ですねえ。
前川 だからもう、本当にもう沈滞していました。例えば、どこの省も「白書」を作っていますよね。各省の方針を国民にお知らせして政策論議の種にするものです。ところが、当時の文部省はまともに「白書」すらつくっていなかった。一応、「教育白書」と称するものはあったんですが、5年に1冊しか出さない。しかも「我が国の教育水準」という毎回同じタイトル。ほぼ統計集なんです。こんなものしか作ってない省だから、本当にやる気のなさが充満していたわけです。
佐高 しかし、文部省と他の省庁とを比べて思うのは、あまり利権に絡むようなところがありませんよね。
前川 最近はスポーツで大きな利権がありますが、基本的には大きな利権は集まらないと思います。
佐高 それもある種、前川さんが文部省を志望した動機だったんですか?
前川 いや、私自身は利権の有無を重視していたわけではなくて、もともと経済官庁に行きたいと思っていなかったんです。私が大学生だった70年代は、高度成長が陰りを見せて、これからは物の豊かさよりも心の豊かさの方が大事だという時代の風潮がありました。その中で揉まれた学生として、ある意味、がめつい企業の味方をするような仕事はしたくないな、と。
......続きはZAITEN3月号で。