ZAITEN2023年03月号
【スポーツ対談】玉木正之
【スポーツ対談】玉木正之 ×溝口紀子「スポーツ界改革を担うのは過去の利権と無縁の女性たち」
カテゴリ:インタビュー
みぞぐち のりこ―1971年生まれ。静岡県出身。埼玉大学教育学部卒業。同大学院教育学研究科修士課程修了。東京大学大学院総合文化研究科博士後期課程修了。柔道家。スポーツ社会学者。1992年バルセロナオリンピック女子柔道52㎏級で銀メダルを獲得。引退後の2004年アテネオリンピックでは、女子柔道フランス代表チームのコーチを日本人女性としては初めて務めた。現在は、日本女子体育大学体育学部、同大学院教授、公益社団法人袋井市スポーツ協会会長、公益財団法人静岡県スポーツ協会評議員などを務める。1児の母でもある。おもな著書に『性と柔 女子柔道史から問う』(河出ブックス)、『日本の柔道 フランスのJUDO』(高文研)がある。
玉木 溝口さんは2013年に『性と柔』(河出ブックス)という本を上梓され、女子柔道が男子柔道から差別され続けてきたことを告発されました。以来、女子スポーツの弱い立場を改める「物言うアスリート」として活躍され、フランス柔道ナショナルチームのコーチとして、彼我の違いから日本の柔道界の暴力問題や利権の構造も批判してこられました(『日本の柔道フランスのJUDO』高文研=15年)。それから約10年。日本の柔道界やスポーツ界は変わりましたか?
溝口 柔道界は確かに改善されました。私の時代には女子の黒帯には白線が入ってましたが、今では男子と同じ黒帯になったことが象徴的です。が、スポーツ界全体としては、まだまだ変えなきゃならないことが多いですよね。
玉木 それはどういう点で?
溝口 10年前は柔道界もスポーツ界も本当に酷い状態でした。大阪府の桜宮高校バスケットボール部のキャプテンが監督の暴力や暴言のパワハラに耐えかねて自殺した事件(12年12月)があり、続けて女子柔道日本代表の選手たちが監督のパワハラやセクハラを告発したんですね。すべて教育や指導の名の下に行われていたことで、社会的にも非難の声が起こるなか、山口香さんなど女子柔道黎明期の不遇な時代を過ごされた方が、まだそんな馬鹿なことをやってるのかという怒りの声をあげ、15人の日本代表候補選手たちの主張を応援したのでした。
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