ZAITEN2023年04月号
月刊ゴルフ場批評66
「栃木カントリークラブ」批評
カテゴリ:月刊ゴルフ場批評
開場から60年以上経つ栃木県の老舗「栃木カントリークラブ」は驚きの連続。紙幅に限界があるので、早速レポートに入ろう。
東北自動車道の栃木インター至近でアクセス良好だが、いきなりクラブハウスの車寄せが残念。何しろ狭くて玄関前は1台しか停められないうえ、乗用カートの導線がすぐ近くなので、人の行き来が多くて危ない。
ハウス自体、聳えるような崖の斜面に張りつくように建てられた日本旅館のような外観だが......。
内部も驚くほど手狭だ。玄関を入って即フロントで、5人も並べばドアの外にハミ出てしまう。
目を疑うのが男子ロッカーだ。中央通路の両側にロッカーがあるが、薄いレースの布で仕切られているだけ。しかも、フロントからマスター室への主導線だけに、女性も通る。丸見えの中、オチオチ着替えもできないぞ。
1階には腰を下ろすところがないが、2階のレストランは大きな暖炉を囲むような木目調の落ち着いた雰囲気で、オープンテラスもあるのが唯一の救い。
練習場は崖の急斜面を上った場所に無理やり造られていて、とても行く気がしない。練習グリーンも幅が20㍎はなく、ロングパットの練習は諦めた。
栃木CCは27ホールだが、この日は東コースからのスタート。ストレートなパー5の1番は、左サイドに高々とネットが張られ、左に飛んだボールはすべてフェアウエーに跳ね返ってきそう。街の練習場を彷彿させるが、衝撃はなおも続く。3番は激しい打ち下ろしでセンターに樹林帯、両サイドにフェアウエーが広がっている......が、何だかおかしい。左サイドのフェアウエーに、こちらに向かって打ってくるプレーヤーがいる。
よく見ると、このホールのティの左下前方にグリーンがある。そう、左サイドのフェアウエーは折り返してくる次の4番だったのだ。実際は隣のホールだが、まったくそうは見えないから戸惑うぞ。分からずに左サイドを狙ってしまう人もいるだろうし、チョロでもしたら4番グリーンに着弾することになる......(怖)。重機のない時代とはいえ、よくこんな造りにしたものだ。
その後も急峻な地形を縫うようなレイアウトが続き、フラットなのは上がりの2ホールだけ。距離は短めで難易度が高いというわけではないものの、グリーンがやたらと小さく、さらに高麗芝なので、アプローチが苦手なタイプは苦労しそうだ。
コースはイノシシの出没に頭を悩ましているらしく、かなり修理地が目立つのも残念。
後半回った西コースもなかなか強烈。大きな山の周囲を、ぐるりとひと回りするように進んでいくレイアウトなので、ドッグレッグやブラインドのホールが多い。田んぼの間のあぜ道をカート道が横切る箇所もあるし、次のホールに辿り着けるのか不安になった。
元の地形を生かしたといえば聞こえはいいが、時代に合わせて改造したほうがよかったんじゃないか? いろんな意味で飽きさせないので、それを面白がるゴルファーにはいいかもしれないが。
●所在地 栃木県栃木市岩出町616 ●TEL. 0282-22-3121 ●開場 1959(昭和34)年11月3日 ●設計者 富澤誠造 ●ヤーデージ 27ホール、9414ヤード、パー108