ZAITEN2023年05月号
【著者インタビュー】『さらば、男性政治』三浦まり
カテゴリ:インタビュー
『さらば、男性政治』
岩波新書/980円+税
みうら・まり―1967年東京都生まれ。上智大学法学部教授。専門は現代日本政治論、ジェンダーと政治。慶應義塾大学卒業。カリフォルニア大学バークレー校大学院修了。Ph.D.(政治学)2021年、フランス政府より国家功労勲章ジュバリエ受章。おもな著書に『私たちの声を議会へ―代表制民主主義の再生』(岩波書店)『日本の女性議員―どうすれば増えるのか』(編集、朝日新聞出版)など多数。
―本書を執筆した動機を教えてください。
2016年に『日本の女性議員―どうすれば増えるのか』(朝日選書)という同じテーマの本を執筆しました。当時は、政治分野の男女共同参画推進法(18年成立)もなく、そもそも諸外国と比較して女性政治家が少ないということも知られていませんでした。
多くの取材や講演で必ず聞かれたのは「なぜこれほど女性政治家が少ないのか」「女性政治家が少ないことのデメリットは何か」「女性政治家が増えることのメリットは何か」「どうしたら増やすことができるか」という4つです。この点についてみなさんの関心が非常に高い。そのアンサーを含め、問題点や解決策について改めてアップデートしたものが本書になります。
―本書では構造的な問題として「候補者モデルの男性化」と指摘しています。具体的にどういったことを指すのでしょうか。
各政党が候補者を選ぶ際にそもそも男性を想定しているということです。特に自民党が顕著です。
理想的な候補者とは選挙で勝てる人材です。それはすでに実績のある現職と似たような人を探すことになり、具体的には24時間365日政治的な奉仕が可能な人が望ましいことになります。地元の関係団体や組織への挨拶回り、地域行事への参加。それらはお酒の席であることが少なくないですし、2次会、3次会もある。
また、地方議員の場合は特にですが、地元の世話役としてさまざまな問題解決のための意見や要望が寄せられる。それらに対応することも支持に繋がります。
これらに24時間365日体制を敷く。つまるところ、かつての〝モーレツ社員〟のような存在が合致します。それは子を持つ母には無理ですよね。そもそも、母親が育児をすべきという概念こそ差別的ではあるのですが、そういった判断から候補者を選ぶと自然と男性候補者になります。
意図して女性を排除しているつもりはないかもしれませんが、合致する条件として女性はほぼ当てはまらないにもかかわらず、「適当な候補者が見つからない」「候補として名乗り上げる女性がいない」と言い訳してしまえば、男性政治の構造が再生産され、環境は硬直したままになります。
......続きはZAITEN5月号で。