ZAITEN2023年06月号

「時すでに遅し」との観測も

岸田「お気楽政権」を襲う異次元の金融危機

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 米国の中堅銀行、シリコンバレー銀行(SVB)の経営破綻をきっかけにした金融危機の波は欧州に飛び火し、スイスの大手金融機関、クレディ・スイス・グループ(CSG)が当局主導で同国首位のUBSに強制合併される事態に発展した。米政府は預金の全額保護方針を打ち出したが、他の地銀でも株価急落や預金流出が続く。欧州市場では投機筋からドイツ銀行株が売り浴びせられるなど「次のクレディ・スイス」を探す動きが収まらない。さながら国際金融危機前夜の様相である。

 危機の引き金となったのは、欧米の中央銀行が昨春以降、インフレ退治を目的に金融引き締めを加速させたことだった。昨春から1年足らずで4%以上も利上げが行われた米国では、「安全資産」とされてきた米国債や政府系のエージェンシー債などの金利変動リスクが一気に噴き出し、銀行が保有する債券に多額の含み損が発生した。同時に長年にわたるカネ余り時代の終焉で市場からの資金調達が難しくなったITベンチャー企業などが銀行預金を大量に引き出す大規模な取り付け騒ぎが起きた。「金利リスク」と「流動性リスク」に銀行が挟撃される深刻な金融危機の構図が浮き彫りになった。 「邦銀は総じて充実した流動性、資本基盤を維持しており、金融システム総体として安定している」(鈴木俊一金融相)。岸田文雄政権は対岸の火事を決め込み、5月に広島で開くG7サミット(先進7カ国首脳会議)後の衆院解散・総選挙で大勝する妄想に耽っているようだ。だが「欧米で金融危機が起きて日本だけ無事なんてことはあったためしがない」(日銀OB)。

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