ZAITEN2023年06月号
西日本新聞「いわくつき企業」提携で問われる品格
カテゴリ:企業・経済
3月末に西日本新聞が発表した業務提携契約が、静かな波紋を呼んでいる。尿検査によって全身15種類のがんのリスクを調べられることをうたうHIROTSUバイオサイエンス(東京都千代田区)との提携がそれ。同社の検査は、以前"文春砲"に直撃されたこともある曰く付きの案件だ。
3月29日に発表された提携は、4月以降、福岡県内の西日本新聞の全新聞販売店でHIROTSUのがん検査キット「N‐NOSE」の販売と検体回収を行うというのが内容。
N‐NOSEとは、HIROTSU社長の広津崇亮が提唱・開発した、線虫を用いたがん検査キット。胃がんや大腸がんなど15種類のがんについて調べることができるという。「たった1滴の尿で検査可能」(HIROTSUプレスリリース)という手軽さと分かりやすさが受け、利用者は30万人を超すとしている。 ライフサイエンス・ヘルスケア領域に関心を寄せる大手企業からも熱視線を集めており、その資本業務提携先も双日など有名どころが名を連ねる。大手ドラッグストア各社とも提携して販路を拡大中。昨年11月には研究開発拠点を置く藤沢市(神奈川県)がふるさと納税の返礼品に加えたところ、1カ月あまりで1600万円の寄付を集めたという。
だが、このN‐NOSE、その実態が不明瞭だとささやかれている。その一端を示したのが、2021年に『週刊文春』が報じた疑惑。「言うほど高い精度は出せない」と訴える元従業員らの証言を掲載した。これに対し、HIROTSUは、「事実無根」と反論。さらに元従業員を「情報を盗み出した」として刑事告訴する旨を公表している。
よくあるやりとりのようにも思えるが、気になるのはN‐NOSEに疑問を投げかける声が医療・検査業界からも相次いでいることだ。同様の検査キットを手がける競合の経営者は、「どのがんのリスクが高いかが分からなければ、結局、再検査が必要。医療機関が儲かるばかり」と指摘する。
......続きはZAITEN6月号で。