ZAITEN2023年06月号
【スポーツ対談】玉木正之
【スポーツ対談】玉木正之 × 坂上康博「日本スポーツ界よ!本質から目を背けず改革から逃げるな!」
カテゴリ:インタビュー
さかうえ・やすひろ―1959年生まれ。一橋大学名誉教授。一橋大学大学院社会学研究科特任教授。専攻はスポーツ史、スポーツ社会学、社会史。著書に『権力装置としてのスポーツ』(講談社)、『にっぽん野球の系譜学』(青弓社)、『スポーツと政治』(山川出版社)、『昭和天皇とスポーツ』(吉川弘文館)、編著書に『12の問いから始めるオリンピック・パラリンピック研究』(かもがわ出版)、共編著に『東京オリンピック1964の遺産 成功神話と記憶のはざま』、『幻の東京オリンピックとその時代』(青弓社)、『スポーツの世界史』(一色出版)など。
玉木 坂上さんは、学生時代に剣道をやっておられて、剣道や柔道といった武道、さらにオリンピックや野球に関する著書を数多く発表されています。私は、『スポーツと政治』(山川出版社)『権力装置としてのスポーツ 帝国日本の国家戦略』(講談社選書メチエ)といった作品で、スポーツと日本の政治や社会との関係を学ばせていただきました。そこで今日は日本のスポーツ全般の問題点をいろいろお訊きしたいと思います。
坂上 その前に私のほうから質問させてください。以前から玉木さんに訊きたかったのですが、ロバート・ホワイティングの本を翻訳出版されましたよね?
玉木 はい。『和をもって日本となす』(角川文庫)で、日本野球の歴史や日米の野球の相違点などが書かれていて、1990年に出版された単行本は10万部を超えるベストセラーになりました。
坂上 あの本は、日本の野球界やスポーツ界にとって、かなりのインパクトがありました。
玉木 はい。日本の野球の歴史で、明治時代に朝日新聞社が「野球害毒論」と呼ばれる野球批判を展開したことや、4年後に手のひらを返して今の高校野球の夏の甲子園大会を始めたことなど、ホワイティングは、日本の野球の歴史は日本版では割愛しても良いのではないかと提案してきたのですが、日本人こそ日本の野球の歴史を知らないのでカットすべきではないと判断し、600頁を超える分厚い本になりました。文庫は上下2巻本です。
坂上 その後玉木さんはスポーツライター廃業宣言をされた。そしてまた復活された。その経緯を訊きたかったのです。というのは、ホワイティングの本は日本の野球界に対してかなり辛辣な批判が含まれていて、玉木さんもいろいろ日本の野球界、スポーツ界に対する批判を書かれていた。けど、まったく変わらないスポーツ界に苛立ちを感じてスポーツライターをやめたのかな、と思ったのです。
......続きはZAITEN6月号で。