ZAITEN2023年06月号
月刊ゴルフ場批評68
「鷹之台カンツリー倶楽部」批評
カテゴリ:月刊ゴルフ場批評
今回は「関東七倶楽部」の一つ、「鷹之台カンツリー倶楽部」だ。
戦前の1932年、「鷹之台ゴルフ倶楽部」の名称で誕生したコースだが、戦争の影響で45年に閉鎖。戦後の紆余曲折を経て、54年に現在の名称になり再建された。
場所は同じだが戦後に一から造り直したということで、新生「鷹之台」の開場を創設の年とする。
戦後、再建にこれだけ時間がかかったのは、用地の一部が農地や借地だったから。再開場の際、牧場として無理やり認可を受け、コース内で羊の飼育を余儀なくさせられたそうだ。
70年近く経過した現在では、周辺は住宅や学校という市街地のど真ん中に位置し、最寄り駅からも徒歩圏内の好立地。名匠・井上誠一氏設計の代表作であり、日本オープン開催4回を誇るチャンピオンコースとしても名高い、正真正銘の名門コースだ。
格式の高さでも有名。久しぶりの訪問が決まり、公式サイトでドレスコードを確認したら、確かに名門倶楽部でもトップクラスの厳しさだ。
夏場を除く上着着用はもちろん、プレーの際のシャツでハイネックの場合、襟の高さが4㌢以上で折り返し可能なものと明記されており、流行りのモックネックは原則禁止。ズボンはテーラードタイプのスラックス着用ときた。最近定着したと思われる機能性下着の重ね着もダメみたいだし、来場時のパーカーも不可。もっとも鷹之台CCにパーカーでの来場はそもそもそぐわないが、記載がある以上、着用してくる人がいるということなんだろう。
そのほか、携帯電話の通話は公衆電話周辺に限定されているし、プレー時間はきっちりハーフ2時間以内と明記されている......。
神妙な気分のまま翌日、ゴルフ場に到着。クラブハウスの内装自体は、実にシンプルで飾り気がないが、設計者の井上氏の写真と設計図、戦前のゴルフ雑誌など、鷹之台CCの歴史と伝統を否が応にも意識させられる。
極めつけはビジターロッカー。入り口に利用案内の小冊子(ドレスコード)が置いてあり、読み終わったものを回収するボックスまで用意されている。ふぅ......。
そんな重苦しい雰囲気もコースに出て吹き飛んだ。とにかくフェアウエーが広い! 両サイドが巨大な木々にセパレートされた典型的な林間コースだが、この解放感は格別だ。
井上氏設計らしく、スタイミーになる木が効いているホールもあるが、せせこましいレイアウトは少ない。周囲が市街地なのに、これだけ広々とした空間を満喫できるとは。要注意なのはグリーン周り。要所に深いバンカーが口を開けているうえ、砲台グリーンも多くオーバーは禁物。繊細なショートゲームのタッチが不可欠だ。
キャディは若くて元気のいい人が多いと聞いていたが、とにかくプレーを急かされた。おかげで2時間はかからずホールアウトしたが、せっかくの名門コースをゆったり楽しむ余裕はなかった。
名門を楽しむなら、メンバーになるしかないようだな。さて、現実の世界に戻るとするか。
●所在地 千葉県千葉市花見川区横戸町1501 ●TEL. 047-484-3151 ●開場 1954(昭和29)年5月23日 ●設計者 井上誠一 ●ヤーデージ 18ホール、7132ヤード(ベントグリーン・フルバックティ)、パー72