ZAITEN2023年07月号
集中連載【第4回】スポンサールート捜査終結後の東京地検特捜部の〝思惑〟
上杉隆が暴く 「五輪疑獄」は終わらない
カテゴリ:事件・社会
「今、検察には多くの国民から激励の声が届いていて、若手も含めて特捜の士気は高まっている」
検察内部からこう内情を聞いたのは、東京五輪を巡る一連の贈収賄事件のとば口となった元東京五輪組織委員会理事の高橋治之容疑者が最初に逮捕された直後の2022年夏の終わりのことだった。
今世紀に入ってからというもの、「大阪地検証拠改竄事件」(10年)や、「陸山会事件」(11年)など、杜撰な捜査や誤認起訴といった事態が次々と発覚し、特捜部は敗北続きであった。とくに故・安倍晋三が総理に返り咲いた12年からの「モリ・カケ・サクラ」問題に揺れた10年間は、検察は政権にすり寄るような姿勢をみせ、世論の期待を裏切る日々が続いていた。 だが、今回の事件こそ、地に堕ちた特捜の名誉を回復させる好機と捉えるムードが検察内に広がっていた。検察内でも「巨悪」を討つことが使命とされる特捜が、五輪汚職を足がかりに復権を懸けた戦いを始めていたのである。
歴史をすり合わせれば、特捜の獲物は「バッジ」(政治家)以外にない。とりわけ76年の田中角栄元首相逮捕以来の首相級逮捕となれば、1兆4000億円もの巨額資金が投じられた東京五輪という国家プロジェクトが舞台であれば、世論の反応も見込めるであろう。
潮目が変わった安倍銃撃事件
22年10月、東京地検特捜部は元東京五輪組織委理事・高橋容疑者の4度目の逮捕に踏み切った。高橋の勾留延長期限ギリギリとなったこの日、特捜は広告代理店ADKホールディングスの植野伸一社長ら3人を逮捕。これで五輪のスポンサー選定を巡る贈収賄事件での逮捕者は計12人となった。
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