ZAITEN2023年08月号
国債格下げリスクに戦々恐々
植田日銀「地獄」の〝どん詰まり〟金融政策運営
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「景気が良くなればいいが、ならなければ地獄だ。出口となるストラテジーが見つからない」。日銀が国債を大量購入して市場におカネをばら撒く量的緩和政策を初めて導入した2001年3月の金融政策決定会合で、こんな警告を発した審議委員がいた。誰あろう22年後に総裁に就いた植田和男その人である。 「学者初の日銀トップ」という名誉欲に駆られて、前総裁の黒田東彦(元財務官)が10年にもわたる「異次元緩和策」というスーパー量的緩和で築いた「負の遺産」の後始末を勇んで請け負った。だが、就任からわずか2カ月で金融政策正常化への意欲はあっけなく萎んだ。それどころか記者会見では「金融引き締めが遅れるリスクは早過ぎるリスクより小さい」と繰り返し、物価上昇率が目標の2%を大きく超える中でも、長短金利操作(イールドカーブ・コントロール、YCC)など黒田時代以来の緩和枠組みの維持に汲々とする始末だ。
インフレ退治の姿勢を続ける欧米との金利差はますます拡大し、外国為替市場ではドルやユーロに対して歴史的な円安が再燃している。超円安は食料やエネルギーなどの輸入物価の高騰を助長し、企業経営を圧迫したり、家計の可処分所得を減らしたりする深刻な弊害を生じさせているが、自らの予言通りに金融政策で対処し切れない「地獄」に嵌まった植田日銀は呻吟するばかりだ。
岸田政権内から疑問の声
「持続的・安定的な物価目標の達成にはなお時間がかかる」。短期金利をマイナス0・1%に、長期金利を0・5%以下にそれぞれ抑え込むYCCの維持を決めた6月16日の金融政策決定会合。その後の総裁記者会見で粘り強い緩和の必要性を説いた植田は心なしか目が泳いでいるように見えた。
......続きはZAITEN8月号で。