ZAITEN2023年08月号
「増税最強コンビ」も形無しの体
岸田〝長期政権〟で財務省「大増税」の幻
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「弱小派閥で『中身が空洞』の宰相を駆って増税路線に道筋をつけるはずが......。飼い犬に手を噛まれたような心境だ」(主計局幹部)。財務省内は今、戸惑いと失望がない交ぜになったような重苦しい雰囲気に包まれている。 アンチ財務省の仇敵、元首相の安倍晋三が鬼籍に入った中、自民党第4派閥の長に過ぎない岸田文雄を首相に戴く政権を「思いのままに操れる駒」と見下していたはずが、いつのまにか政治力学は一変。広島での主要7カ国首脳会議(サミット)成功や党内に目ぼしいライバルがいないことに気を大きくした岸田は長期政権化ににわかに色気づき、衆院解散・総選挙をにらんだバラマキ財政にひた走っている。 敵基地攻撃能力の整備などを盛り込んだ防衛費増額の財源の一部に充てるはずの増税は実施時期があっさり先送りされ、児童手当の所得制限撤廃などを柱とした「異次元の少子化対策」に至っては3・5兆円もの歳出増を賄う手立てが固まらず、回収の当てもない「つなぎ国債」発行で調達することを余儀なくされる始末だ。「将来の増税に布石を打てる実力コンビ」(次官OB)と持ち上げられてきた事務次官の茶谷栄治(1986年旧財務省)と主計局長の新川浩嗣(87年同)も形無しの体。このままでは岸田政権を「傀儡」化して霞が関最強官庁への復権を策した野望は空回りに終わりそうな雲行きだ。
窮地に陥る理財局
「長短金利操作(イールドカーブ・コントロール、YCC)撤廃の判断はくれぐれも慎重を期してもらいたい。金利操作の対象を現行の10年物国債から5年物などに短期化する修正も絶対に避けてほしい」。国の借金の証文である国債の発行を管理する財務省理財局局長の斎藤通雄(87年同)の側近筋は6月はじめ、日銀総裁の植田和男や副総裁で金融政策の企画・立案を取り仕切る内田真一周辺にこうクギを差した。
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