ZAITEN2023年08月号
「結局はパフォーマンス」と市場は冷ややか
北尾SBI新生銀「公的資金返済」のまやかし
カテゴリ:企業・経済
借りたものは返すのが基本。返さなければ泥棒と一緒」
SBIホールディングス(HD)社長兼会長の北尾吉孝がこう言い放ち、大手行で唯一、国から注入された公的資金3500億円が残る新生銀行(現SBI新生銀行)を敵対的買収で手中に収めてから1年半。SBIHDは今年5月、連結子会社(株式保有比率50・4%)となったSBI新生銀の一般株主に対してTOB(株式公開買い付け)を実施し、上場廃止にする方針をぶち上げた。
北尾周辺は「公的資金を返すには上場廃止が最善の策」と強調する。ただ、返済を受ける政府系株主と少数の一般株主との公平性をどう担保するのかやSBI傘下入り後も脆弱な銀行の収益力をどう向上させるのかといった根本的な問題は置き去りにされたまま。「デジタル金融時代のエスタブリッシュメント」を気取る北尾は、金融当局や市場に大見得を切った以上、「何もしなければ格好が付かない」と焦燥感を高めているようだが、「四半世紀にもわたって、しこってきた公的資金問題を一気に解決するような魔法の杖はない」(日銀筋)。市場関係者の間では「北尾一流のまやかしのパフォーマンス。結局、早期の公的資金完済にはつながらないのではないか」と訝る声がしきりだ。
1株2800円で取得
SBI新生銀の非上場化に向けたTOBの期間は5月15日~6月23日。SBIHDは子会社のSBI地銀HDを通じ、政府系株主である預金保険機構と整理回収機構の保有株(22・98%)を除き、一般株主が持つ最大27%分の株式を1株2800円で取得する計画だ。本誌が読者の手元に届くころには結果が判明していると見られるが、仮にTOBが成立すれば、株主はSBIHDと政府系のみとなり、SBI新生銀は上場廃止となる。SBI側はこれを前提に2025年春までに公的資金返済の具体的枠組みを政府側に提案すると約束している。北尾は記者会見で「少数株主がいなくなれば、SBI新生銀の経営の自由度が高まり、(収益拡大と公的資金返済に向けて)色々なやり方があるんじゃないか」などと思わせぶりな発言を振り撒いている。金融庁内でも「旧日本長期信用銀行(SBI新生銀の前身)の公的資金問題に片を付けられれば、金融当局として大きな得点になる」(監督局幹部)などと妄想が膨らむ。だが、果たしてそう上手く事が運ぶだろうか。
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