ZAITEN2023年09月号
闇バイト―凶悪化する若者のリアル
【著者インタビュー】『闇バイト―凶悪化する若者のリアル』
カテゴリ:インタビュー
『闇バイト―凶悪化する若者のリアル』
祥伝社新書/930円+税
ひろすえ・のぼる―1970年、福岡県生まれ。社会学者。専門は犯罪社会学。龍谷大学犯罪学研究センター嘱託研究員、久留米大学非常勤講師(社会病理学)、法務省・保護司。著書に『ヤクザになる理由』『だからヤクザを辞められない―裏社会メルトダウン―』(ともに新潮新書)など多数。
―執筆動機を教えてください。
23年早春、「ルフィ」や「キム」「ミツハシ」を名乗る人物を指示役とした連続強盗事件が関東一円で相次ぎました。こうした事件報道を観て、なぜ、直ぐに捕まる無計画な犯罪に手を出すのかという疑問を持ったことが、本書執筆のスタート地点でした。
その後、様々な人たちに取材して分かったこととして、「最近の若者は新聞を読まず、ニュースも見ない」ということです。だから、社会問題になっている闇バイトに関しての正しい理解が為されておらず、「高収入」「即金」などという言葉に安易に騙されてしまうのではないかという点に思い至りました。そうであるなら、「闇バイト」は、犯罪であり、誰もが被害者にも加害者にもなり得る身近にある脅威だという事実を、犯罪学者、更生保護従事者として、社会に訴えるべきだと考えたことが本書執筆の動機となりました。
―TwitterなどのSNS以外に大手求人サイトでもリクルートしていたとありました。
元保護観察官に確認したところ、保護観察対象者の証言として、2010年以前には、ハローワークに闇バイトの求人が出されていたとのことです。面接に行った時点で、履歴書を出して個人情報を握られていますから、断れなかった可能性があります。紹介責任は問われず、応募者の自己責任のみで、人生に消し難い汚点が付くことには、納得ができません。
―テレビのアンケートを装って資産の状況などを聞き出す手口があるのですね。他にどのような手段を使ってターゲットを探すのでしょうか。
正規の合法な名簿屋から個人情報を買う方法があります。これはセールスマンのための名簿を扱う会社です。学習教材会社なら、ファミリー名簿を売るのです。他にも会社の事務所などに個人情報を盗みに入るケースがあります。個人情報は金庫ではなく、キャビネットなど、比較的セキュリティが甘い場所に保管しているので、盗みやすいそうです。企業は、万一名簿が盗まれたとしても、顧客の信用失墜につながるから、被害届を出さない可能性があるから安心だと、犯行を知る者はうそぶいていました。
......続きはZAITEN9月号で。