ZAITEN2023年11月号
日本の政治がもっとも熱かった1年を 元小沢一郎担当記者が再検証する
城本勝「壁を壊した男 1993年の小沢一郎」
カテゴリ:インタビュー
『壁を壊した男 1993年の小沢一郎』
(小学館)/¥1,800円+税
しろもと・まさる―1957年、熊本県生まれ。一橋大学社会学部を卒業後、82年にNHKに入局。福岡放送局を経て東京転勤後は、報道局政治部記者として自民党・経世会、民主党などを担当した。18年退局後は、日本国際放送代表取締役社長などを経て2022年6月からフリージャーナリスト。
―『壁を壊した男 1993年の小沢一郎』を執筆した動機を教えてください。 小沢一郎さんは自民党を割ることで選挙に持ち込み、神業とさえ言われる戦略で非自民勢力を糾合して細川護熙政権を樹立したのです。そして、史上最強の野党となった自民党の抵抗や与党内での葛藤を半年かけて乗り越えて、小選挙区比例代表並立制の導入を柱とする政治改革関連法を成立させました。
しかし、細川政権は内部対立が激化し、自民党の執拗なスキャンダル追及もあって短命に終わり、後継の羽田孜政権も小沢さんと対立した武村正義さん率いるさきがけと村山富市さん率いる社会党が相次いで政権を去って崩壊。そして、その後に成立した政権は、自民党が長年の宿敵である社会党の党首・村山を総理に担ぐ「自・社・さ」連立政権でした。「五五年体制」が自民党と社会党が越えられない壁に隔てられた体制だったとすれば、小沢さんがその壁を壊した結果、自社両党が手を握ることが可能となりました。
1993年、小沢さんを激しい権力闘争に駆り立てたものは一体何だったのか。なぜ小沢さんはそこまでして闘ったのか。かつて政治部記者として小沢さんを長年取材した私は、そのヒントを探りたいと93年の小沢30年の節目を機に本書を執筆しました。
―小沢さんはヒールのイメージが強いと思います。
小沢さんは、「五五年体制」という壁を壊した後も、試行錯誤を繰り返し、09年には再び野党勢力を結集した民主党で二度目の政権交代を実現させます。しかし、またしても与党内の反小沢感情が党内対立を引き起こし、民主党政権は瓦解してしまいます。
ヒールのイメージが付きまとう小沢さんですが、私は意外に優しいというか、お茶目というイメージを持っています。
.....続きはZAITEN11月号で。