ZAITEN2023年12月号
医療現場のガンと化す「日本医師会」と「厚労省」
【特集1】厚生労働省の牙城「企業年金侵略」を画策する金融庁
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「企業年金、運用成績公開 実績向上促し賃金上げ」。
日経新聞10月3日付朝刊1面はこんな見出しで、従業員から集めた掛け金を運用する「企業年金」の改革に政府が乗り出すと報じた。首相の岸田文雄が看板政策に掲げる「資産運用立国」と絡めたのがミソで、霞が関では「金融庁がリークして仕掛けた特ダネ」との見方が広がった。企業年金は本来、厚生労働省の所管のはずだが、金融庁はかねて「年金基金幹部らと馴れ合うような役所に任せていては、いつまでたっても運用成績は向上せず、国民資産形成も進まない」(総合政策局幹部)などと、厚労官僚の無能ぶりを揶揄してきた。岸田が国民の資産運用の必要性をにわかに力説し始めたのは、宏池会(現岸田派)の先達である元首相の池田勇人を猿真似して打ち出した「令和版所得倍増プラン」が行き詰まった結果に過ぎないが、金融庁にとってはそんな経緯はどうでもいいこと。首相の威光を笠に着て、厚労省から企業年金を監督する実権を奪い、「省(庁)益拡大」につなげようと虎視眈々だ。
政権浮揚を期待した9月の内閣改造も不発に終わり、目玉政策づくりに腐心する岸田官邸も金融庁のシナリオに同調せざるを得ない状況。首相が主宰する省庁横断の「新しい資本主義実現会議」が年末までに取りまとめる資産運用立国プランには、企業年金改革が大きな柱として盛り込まれることが確実視されている。
金融庁の権限奪取計画
企業年金は国民年金(基礎年金)や会社員が加入する厚生年金に上乗せする私的年金だが、制度が複雑で分かりづらい面があり、受取額を把握していない加入者も多いとされる。制度を運営する企業側は年金の財政状況を悪化させることを心配する余り、安全運用志向が強く、その分、十分な投資収益を上げてこなかったのは事実だ。
......続きはZAITEN12月号で。