ZAITEN2023年12月号
月刊ゴルフ場批評74
「浜野ゴルフクラブ」批評
カテゴリ:月刊ゴルフ場批評
今回は千葉の名門・浜野ゴルフクラブ。「富士通レディース」や「日本プロ」開催の歴史があり、今年も女子ツアーの「パナソニックオープンレディース」が行われた。もともと日東興業系の高級コースとして、メンバーでも予約が取りにくい、接待需要も多い人気コースだ。
売りはフェアウエーの広さとフラットな地形だ。当初は27ホールを計画し、35万坪という広大な敷地を調達した。そこでの18ホールだけに、まずハウス周りの練習グリーンや、同じクオリティのチッピンググリーンの広さに度肝を抜かれる。
コース自体も同じ。フェアウエーは他のコースの2ホール分はありそうだ。実際、フェアウエー幅50㍍以上というホールも少なくなく、OBはほぼ外周だけ。高低差も19㍍とほぼフラットなので、歩きプレーでもそれほど苦にならない。
ドライバーを振り回したい飛ばし屋には、これ以上望めないほど開放感たっぷりのコースだが、名匠・井上誠一の設計だけあって、要所要所に木やバンカーが小憎らしく配置され、攻略ルートが絞られている。
ティショットは伸び伸び打てるものの、きっちりパーオンを狙うためには、緻密に攻略ルートを考える必要がある。特に、少しでもラフに入れると途端に難易度が上がる。一見、「どこに打っても大丈夫」のはずが、実は頭を使わないと攻略できないのだ。
また、上がり3ホールはいずれも池が絡み、単なる林間コースとは一線を画すレイアウトだ。実は同氏の遺作、開場の3年前に他界している。設計はしたものの現場の監修には参加していないため、その辺も関係あるのだろう。
そんな名コースが大ピンチを迎えている。酷暑によるグリーンのダメージが深刻なのだ。グリーンは「ペンA2」と「ペンクロス」というベント芝の2グリーンだが、ホールによってはいずれも深刻なダメージを受けている。
表面は黒ずみ、酷いところは完全に芝が剥げ、土が剥き出し。応急処置としてところどころ芝を張り直してあるが、それが余計に痛々しい。2グリーンのどちらかを休められるにもかかわらず、この惨状とは......。
今年はとにかく夏が長かった。梅雨は短く、6月下旬から30度超えの日が続いたことで、関東エリアではコースによって極端に雨の少ない場所も多かった。酷暑は9月になっても続き、ベント芝にとってはつらい日々が続いた。
その影響は日本各地で見られ、プロの大会でも無残に土が露出したフェアウエーやグリーンが画面に映し出されたこともあった。プロの大会でここまでコンディションが不良になるなど、かつてなら考えられなかった。
もはや、関東の平地はベント芝の適地とはいえず、コウライ芝やバミューダ芝に切り替えるコースが増えるかもしれない。浜野GCの惨状は致し方ないとはいえ、名門や接待コースほどコンディションと見栄え(見栄)は重要。名門・接待コースにとってターニングポイントになる年かもしれない。
●所在地 千葉県市原市永吉937 ●TEL. 0436-52-3111 ●開場 1984(昭和59)年12月22日 ●設計者 井上誠一 ●ヤーデージ 18ホール、7217ヤード、パー72