ZAITEN2024年02月号
2023年総まとめ製薬業界【記者座談会】
「日本を蝕む製薬企業」の闇
カテゴリ:企業・経済
A 今振り返るとピンと来ないけど、2023年の正月はまだマスク生活だった。5月の連休明けからは、新型コロナウイルス感染症が5類に移行し、少しは暇になるかと思ったけど、そんなことは全然なかった(苦笑)。
D まったく同じです。6年に1度の医療・介護・障害福祉サービスのトリプル改定は分かっていたからともかく、予想外のことが本当に次から次に起きる業界でまいりました。今になって第一三共が新型コロナワクチンを実用化し、接種できるようになったといっても「あ、そう」という感じすらします。 何と言っても23年最大の衝撃は後発薬(ジェネリック医薬品)大手の沢井製薬で発覚した不正問題でしょうか。
C 主力の九州工場(福岡県飯塚市)で検査不正を長年していたという問題で、『ZAITEN』の23年10月号(9月1日発売)の初報後、一部メディアが後追いしましたが、10月23日に同社が緊急会見を開くまで全国紙、テレビなどの大手マスコミは沈黙したままでした。とはいえ、ZAITENの報道後、ネットでは業界関係者を中心にかなり話題になっていましたね。
B 胃炎や胃潰瘍の治療に用いる「テプレノンカプセル」の品質安定性試験をクリアするために、新しいカプセルに詰め替えていたというのが不正の内容。23年4月に検査担当者が交代した際に発覚したのですが、決められた手順から逸脱しているといういわゆる『GMP違反』です。沢井製薬によると、不正があったのはこの1品目で、組織的に行ったものではないとする報告書を公表しています。
C 沢井製薬は、東和薬品、日医工と並び国内後発薬トップメーカー。医療関係者からの信頼も厚かったのだけども一皮むけば、品質に対する意識もこの程度だったとは......「がっかりした」という声も多く聞かれました。「本当にテプレノンカプセルだけなのか」と不安視する向きも少なくないです。 D 監督官庁である厚生労働省も、23年の内になんらかの表明をすると思いますが、業務停止の可能性も否定できないでしょう。けれどもそうすると、医薬品不足が一段とひどくなってしまう。担当者にとってはジレンマです。
A そうした事態を見越し、一時は沢井製薬に対して厚労省が公表を差し止めるように指導していたというから呆れる。確かに「無用の混乱は避けたいと思う気持ちは分かる」と理解を示す業界関係者もいるけど、世間一般からみればただのなれ合いに過ぎない。社会との認識の乖離を批判されても仕方ない。
C 記者会見での木村元彦社長の態度の悪さにも批判が集まりました。問題が発覚した部門の当時のトップとして責任が追及される立場であるにもかかわらず、かなりふてぶてしい印象が強かった。「品質保証担当者が足りていない。良い人がいれば紹介して欲しい」との軽口に唖然とした報道関係者も少なくなかったはずです。
D そもそも論ですが、後発薬業界は不正が多すぎませんか。22年だけで共和薬品工業、広貫堂など複数の会社が業務停止というのは他業界を取材してきた身としては信じられないレベルです。
C 共和薬品工業はGMP違反ですが、私的整理の一種である事業再生ADRを申請していることが報じられるというおまけつき。大がかりな製造・品質問題で実質的に倒産した日医工も不正でケチがつき、資金繰りに窮した結果、ADR後に上場廃止となり万事休す。共和薬品工業も同じ末路を辿りそう。ただでさえ医薬品が足りない昨今、精神・神経系治療薬で一定の存在感を示す会社だけにそうなった場合の影響が心配になってきます。
......続きはZAITEN2月号で。