ZAITEN2024年04月号
新たな金融危機再来の引きがねか
あおぞら銀行「巨額赤字」で公的資金再注入の懸念
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「あおぞら銀行は特殊なケースだ。他行のエクスポージャー(貸出資産)に対する懸念はない」
金融機関の経営をモニタリングする金融庁の審議官が2月2日、マスコミに発したメッセージは、事態の深刻さをかえって浮き彫りにした。
あおぞら銀は前日、2024年3月期に連結純損益が当初予想の240億円の黒字から一転、280億円の赤字に転落するとの業績予想修正を発表。株価は前日終値比で2割以上も急落、ストップ安のまま取引を終えていた。主因は米国のオフィス向け不動産融資の焦げ付きに備えた貸倒引当金の積み増しと米金利上昇に対応した保有有価証券の含み損の処理。社長の谷川啓(1985年旧日本債券信用銀行)は「現時点で考えられる最大限の引き当てをした」などと予防的な措置であることをアピールしたが、投資家には聞き入れられなかった。今後の米不動産市況次第では、さらなる損失計上を迫られるリスクがあるからだ。
米オフィス需要低迷が直撃
赤字転落は米リーマン・ショック直後の09年3月期以来15年ぶり。市場では、当局主導で新生銀行との強制合併交渉(その後破談)にまで追い込まれた経営危機の再来さえ想起された。時あたかも米国では同じく商業用不動産市況の悪化を背景に、地銀持ち株会社のニューヨーク・コミュニティ・バンコープ(NYCB)が赤字決算に転落したことをきっかけに市場で株を売り浴びせられていた。日米で共鳴したかのような銀行の経営不安の再燃は、金融危機の予兆にも映る。
インフレ退治を掲げて米連邦準備理事会(FRB)は一昨年春以降、急激な利上げを進めたが、その副作用の最たるものが米商業用不動産の価格崩壊だ。市場ではかねて海外向け貸出残高が多いあおぞら銀の経営への影響が懸念されていた。邦銀でありながら、米国企業や不動産向けの積極的な融資で知られてきたからだ。
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