ZAITEN2024年04月号
西野智彦「金融政策への過大評価から目覚めよ」
西野智彦「アベノミクスの熱狂は幻想だった―金融政策への過大評価から目覚めよ」
カテゴリ:インタビュー
『ドキュメント異次元緩和―10年間の全記録』
(岩波新書)/¥960+税
ジャーナリスト 西野智彦
にしの・ともひこ―慶応義塾大学卒業後、時事通信社入社、経済部などを経て、96年TBS入社。経済部、政治部などを経て、「筑紫哲也NEWS23」などの制作プロデューサー、報道局長などを務める。主な著書に『ドキュメント日銀漂流』『ドキュメント通貨失政』(岩波書店)などほか多数。
―本書は黒田東彦元日銀総裁時代の金融政策について、その表裏の舞台を精緻に描いています。
今から2年前、『ドキュメント 日銀漂流 試練と苦悩の四半世紀』(岩波書店)を上梓し、新日銀法制定以降の日銀の歴史を検証しました。今回の著作は、そこでカバーできなかった黒田東彦総裁の後半と、植田和男新総裁の誕生までを再検証し、約10年間におよぶ〝異次元緩和〟の展開についてまとめたものです。
異次元緩和をめぐっては、好悪さまざまな評価がありますが、この本ではできるだけ事後的な論評やレッテル貼りを排し、どのような議論を基に誰が、いつ、どんな判断をしたのかというファクトを積み上げることに徹しました。それにより、多くの人々にそれぞれの立場から検証・評価してほしいと考えています。
私個人としては、壮大な経済社会実験だった異次元緩和は、今のところ成功したとも、大失敗に終わったとも言えない、つまり評価を下すのは時期尚早だと考えています。あくまでも、暫定的な評価しか下すことは出来ません。
例えば黒田総裁の就任時に1ドル=94円台だった円相場は、退任時には136円に下落しました。企業収益はこの間にほぼ2倍になり、日経平均株価は1万2000円台から3万円まで回復。失業率は2%半ばまで低下し、新規雇用者は430万人増加しました―これらは、黒田氏自身が「戦果」として強調しています。
その半面、日本経済の潜在成長率は0・8%から0・3%に低下し、2月15日の内閣府の発表によるとGDPはドイツに抜かれ、世界4位に後退しました。
......続きはZAITEN4月号で。