ZAITEN2024年04月号
台湾で隠蔽される健康被害 TSMC誘致は第二の水俣病問題になりうる
深田萌絵「光と影のTSMC誘致―台湾で隠蔽される健康被害」
カテゴリ:インタビュー
『光と影のTSMC誘致』
(かや書房)/¥1,500円+税
ITビジネスアナリスト 深田萌絵
ふかだ・もえ―Revatron株式会社代表取締役社長。早稲田大学政治経済学部卒。著書に『IT戦争の支配者たち』(清談社パブリコ)、『ソーシャルメディアと経済戦争』(扶桑社新書)、『量子コンピュータの衝撃』『メタバースがGAFA帝国の世界支配を破壊する! 』(ともに宝島社)などがある。
私はITビジネスアナリストとして、日本の半導体産業の危機について訴えてきました。台湾の半導体企業であるTSMCの熊本進出はメディアでは好意的に報道されることが多いですが、日本にとって、何より熊本県にとって害でしかありません。
TSMCは世界の半導体製造において、車載の分野で7割以上、最先端の分野では9割以上を占めている独占企業です。半導体の製造工程の大きな割合を回路表面の微細なゴミの洗浄工程が占めています。製造過程で大量の汚染水が生じますが、日本やアメリカなど環境規制が厳しい国は、高価な機材を入れて汚染水を浄化しています。
一方で、TSMCは台湾本国で、有害物質など発がん物質を垂れ流しにしてきました。汚染水を浄化する高価な装置を入れないことで、不当に競争力を保っていたのです。台湾は人口密度あたりの人工透析患者数が世界一です。そのことと、TSMCが台湾で最大の半導体工場を持っていることは関係していると私は考えています。TSMCは目先の利益を優先し、台湾の人の健康を犠牲にして独占的地位を獲得しました。
台湾の被害者たちは、何度も政府に環境汚染の実態を訴えてきましたが、台湾政府はそれをもみ消しました。台湾の被害者の方々は、台湾政府に抗議をしても埒が明かないので、TSMCのチップを使っているAppleに抗議をしています。
......続きはZAITEN4月号で。