ZAITEN2024年07月号
『メディアはなぜ左傾化するのか』産経記者受難記 三枝玄太郎
【著者インタビュー】メディアはなぜ左傾化するのか
カテゴリ:インタビュー
『メディアはなぜ左傾化するのか』産経記者受難記
新潮新書/840円+税
さいぐさ・げんたろう―1967年東京都生まれ。早稲田大学政経学部卒業。91年、産経新聞社入社。警視庁、国税庁、国土交通省などを担当。2019年に退社し、フリーライターに。著書に『十九歳の無念 須藤正和さんリンチ殺人事件』など。
―「メディアの左傾化」について具体例を教えてください。
共同通信社会部が「ヘイト問題取材班」を結成しました。社会部や地方支局の記者有志によるものだそうです。実は共同通信には、私が当時配信していたニコニコ動画に杉田水脈衆院議員を呼んだ際、その番組で杉田議員が「ヘイト発言をした」という記事を配信されたことがあります。
当該記事は以下の通りです。
〈自民党の杉田水脈衆院議員は、自身が一部賠償を命じられた2つの民事裁判について「ふっかけられた」と述べた。2訴訟とも杉田氏のツイッター(現在のX)やインターネット番組での配信に対し、名誉侵害などが問われたもの。16日に配信されたインターネット番組「ニコニコ生放送」で言及した。(以上、引用)〉
この「ニコニコ生放送」こそ、当時私が配信していた番組です。この記事が配信された際の感想は「杉田議員は共同通信にロックオンされたな」というものです。杉田議員は「動画配信の有料部分を記事にするのはルール違反だ」とご立腹でしたが、それよりも民事訴訟は手間暇がかかって非常に煩わしいものです。「ふっかけられた」というのは個人の感想であり、相手が市民団体だからといって、文句のひとつも言ってはいけないという道理はありません。記事にするだけの価値があるのか、と率直に思いました。
事実、この記事を後追いした会社はほとんどありませんでした。通信社の記事は、各地方紙に配信され、掲載されますから、地方を拠り所にする国会議員としては、その選挙区の新聞にその都度、掲載されます。読者は背景事情を知りませんから、政治家としてはダメージになるわけです。
杉田議員はその後も相次いで共同通信のやり玉に挙がっています。中には「確かにちょっと問題だな」と思うものもあります。しかし、3月9日の〈自民の杉田氏、アイヌ関係者巡り「存在しない差別」話す〉という配信に至っては、言いがかりとしか言いようがないものです。同件は、杉田氏が人権状況の改善を求めるアイヌ民族の関係者が女性差別撤廃委員会で「アイヌの女性は健康保険に加入できない」と発言したものを〈(委員会は)嘘を吹聴する場ではありません(中略)日本には存在しない差別を話す人たちにとても違和感を感じました〉と「X」に書き込んだものです。
......続きはZAITEN7月号で。