ZAITEN2024年07月号

「税の不公平」を決して看過してはならない

経済学者 野口悠紀雄「自民党の裏金問題は脱税だ」

カテゴリ:インタビュー

『日本の税は不公平』
(PHP新書)/¥1,100+税

のぐち・ゆきお―1940年東京生まれ。1964年大蔵省入省。早稲田大学大学院ファイナンス研究科教授などを経て、一橋大学名誉教授。東京大学工学部卒業。専門は日本経済論。著書に『日銀の責任』(PHP新書)、『どうすれば日本経済は復活できるのか』(SB新書)など。

 自民党派閥による一連の裏金問題は、『しんぶん赤旗』の報道を端緒に神戸学院大学の上脇博之教授が刑事告発をしたことによって検察が動きました。安倍派の場合は、還流は派閥から政治資金収支報告書に記載しなくてよいと指示されていたと報道されています。  

 政治資金であれば収支報告書に記載しなければならないので、政治資金ではないと考えざるを得ません。議員側もそういうものと理解して受け取ったのでしょう。だから課税所得であり、本来であれば、申告しなくてはいけない。申告しなければそれは申告漏れ、脱税ということになります。

 裏金問題の報道が確定申告の時期と重なったこともあり、政治家の杜撰な実態に多くの国民から「不公平だ」という批判が噴出しています。それは納税義務において、政治家が一般国民と別扱いされていること、国民は申告漏れがあれば追徴課税されるにもかかわらず、政治家は逃げおおせていることへの怒りです。  

 国会議員にはさまざまな特権があります。歳費は課税所得ですが、調査研究広報滞在費や立法事務費など多くの非課税の所得があります。それに加えて、JR特殊乗車券や国内定期航空券、公設秘書経費などが付きます。  

 率直に言って、羨ましいですね。これも国民が納得できない要因になっていると思います。これだけ多額の非課税収入を得られると納税者意識が麻痺してしまうのかもしれません。

 世界の歴史を見渡してみても、税への不満が引き金となり、フランス革命やアメリカ独立戦争が起きました。革命は多くの場合、税に対する不満をきっかけにして起こっています。  国会議員は税制を決める立場にあるのに、税制上の取り扱いが不公平なのは大問題です。自民党の裏金問題は決して看過すべきではありません。

......続きはZAITEN7月号で。


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