ZAITEN2024年09月号
【連載】井川意高の時事コラム「どの口が言う‼」 第11回
井川意高の時事コラム『どの口が言う‼』11「〝頂き女子りりちゃん〟とM資金事件」
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編集部から降りてきた今月のお題は「〝頂き女子りりちゃん〟と罰せられない裏金議員たち」。
いかにも無理やり感たっぷりな組み合わせだが、たまには素直に編集部の言うことを聞くとするか。
〝頂き女子りりちゃん〟と同じ手口で男性たちから金を引っ張って(騙し取って)、詐欺罪で逮捕された元女子大生の初公判が7月11日に開かれたとのこと。(〝頂き女子りりちゃん〟とは男性の好意につけ込み多額の現金を手に入れたうえ、そのマニュアルを販売していた「りりちゃん」こと渡邊真衣という25歳の女性。懲役9年、罰金800万円の判決を言い渡された)
編集部から送られてきたURLを開いて記事を読んだ感想は、「あ〜あ、まだこんな見え見えの嘘に引っかかる男性がいるのかよ」である。 この元女子大生は、りりちゃんが販売していたパパ活(詐欺)マニュアルを基にして、それをまたアレンジしたマニュアルを販売していた女からマニュアルを買って(ややこしいな)、男性から金を騙し取っていたという。つまり、りりちゃんの孫弟子といったところか。
でもね、この手の話(犯罪)って私が若い頃から何度も繰り返し話題になってきたわけで、人間の、というより男と女の性(さが)と業(ごう)って不変なんだなって思う。
もちろん、騙した女が悪いのだが、騙された男に対してさほど同情が湧かないというか、ダサいなと思ってしまう自分は冷たい人間でしょうかね?
女性が家族の病気や不幸を理由に、男性に金を無心したからといって、知り合って間もない女へ理由はどうあれ金を渡す男に下心がなかったと言い切れるのか?
取材を受けた被害者男性は「ガチ恋(真剣な恋)」だったというが、40歳にも50歳にもなるオトコが、かりに真剣な恋だとしてもそこに肉体関係の希望がなかったわけはあるまい。結局、ロマンス詐欺であろうが投資詐欺であろうが、引っかかる側には下心があるのだ。
楽してうまいこと金を稼ぎたい。金を出してでもモテたい。どちらもあさましい欲である。本当においしい投資なら、私は他人に教えず独り占めにします!
付き合って何年も経つパートナーでもなければ、女性はほんとうに好きになった相手には嫌われたくないからお金の話はしません! ほんとうに好きな相手にはオンナは金を貢ぐものなのだ。現に、今回の元女子大生も被害者から巻き上げた金を、意中のホストに貢いでいたわけで。2億5000万円を詐欺で稼いだ元祖りりちゃんも、その99%をホストに使っていたというし。
厳しい言い方だが、いい歳してパパ活詐欺に引っ掛かる男性には、かわいそうだとは思う一方で、10代の子どもじゃあるまいし大丈夫かよ? とも思ってしまうんだよね。
でも、詐欺に引っかかる人間て、意外と知能の高い優秀な人間が多いらしい。「頭の良い自分が詐欺なんぞに引っかかるはずがない」と思って、詐欺に遭ってることを否定しがちなんだそうだ。
最近も外食業界の上場企業創業会長が30億円ものM資金詐欺にあった公判のニュースがあったし。過去のM資金事件でも被害者に名を連ねたのは、錚々たる大企業の社長クラスが多かったのがなによりの証拠。 ということは、女にモテて恋愛指数高いと自認する私は、ロマンス詐欺に引っかかりやすいってことか! 気をつけよう!
あれ?「罰せられない裏金議員たち」とつなげられなくなったぞ。 ま、いいか。そもそもパパ活詐欺女子と裏金議員をつなげっていう編集部がムチャ振りなんだから。
井川意高(いかわ・もとたか)――大王製紙元会長。1964年、京都府生まれ。東京大学法学部卒業後、87年に大王製紙に入社。2007年に大王製紙代表取締役社長に就任、11年6月~9月に同会長を務める。著書に『熔ける 大王製紙前会長 井川意高の懺悔録』(幻冬舎文庫)など。
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