ZAITEN2024年09月号

テレ朝経営陣にメディアと政治権力の関係について問う

【特集】前川喜平「テレビの萎縮を放置すれば民主主義が破壊される」

カテゴリ:インタビュー

まえかわ・きへい―1955年、奈良県生まれ。東京大学法学部卒業。79年、文部省入省。2016年、文部科学事務次官。17年、退官。「テレビ輝け! 市民ネットワーク」共同代表。

 今年6月に開催されたテレビ朝日ホールディングス(HD)の株主総会で、同社の約4万株を保有する市民グループ「テレビ輝け!市民ネットワーク」が株主提案し、話題となりました。これまで原発や公害問題で市民グループが株主提案をした例はありますが、メディアに対しては初めてのケースではないでしょうか。株主になって株主総会で質問するだけではインパクトが少ない。メディアに対し、株主提案として議案を提出するというところまで行ったのは一定の効果があったと思っています。この運動を始めたのは弁護士グループの方々で、その中心メンバーから声を掛けられたのが昨年9月です。その趣旨に全面的に賛同し、田中優子・法政大学前総長とともに私も共同代表として関わりました。

 今年2月の記者会見でも説明しましたが、要するにテレビの報道がどんどん萎縮していて、政治権力に忖度するような体質が強まっているのではないか。このままだと民主主義が壊されていく懸念がある。非常に影響力の強いテレビというメディアがきちんと真実を報道していないのではないか、ということですね。

 では、なぜテレ朝をターゲットとしたか。政権との距離の近さで言えば、もっと政権に近いテレビ局はあるわけですが、我々が問題視したのは、テレ朝の変節です。  

 この10年ぐらいの間にテレ朝の報道姿勢が我々から見ると大きく後退した。権力を批判したり、監視したりするという力が弱まった。期待を裏切られているという気持ちが強いからです。特に「報道ステーション」という番組で2015年3月、コメンテーターだった元経産官僚の古賀茂明氏の〝降板事件〟が起きました。古賀氏は生放送中の同番組内で「菅官房長官(当時)はじめ官邸の皆さんにはものすごいバッシングを受けてきました」と暴露するなど、告発的な発言を続けていました。

 この〝降板事件〟後の16年2月、当時の高市早苗総務相(現経済安全保障担当相)が、放送局が政治的な公平性を欠く場合は〝電波停止〟を命じる可能性に言及しました。その伏線として、官邸の礒崎陽輔首相補佐官が総務省側に対して放送法の政治的公平の解釈について解釈変更を迫っていた。そのことが記録された行政文書が出てきた。この文書は総務省のホームページで公開されています。

......続きはZAITEN9月号で。

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