ZAITEN2024年09月号
井藤「制度屋長官」で暗雲
【特集】「資産運用立国」に毒された金融庁の〝珍人事〟
カテゴリ:政治・国際
「背信」の金融庁
井藤英樹「制度屋長官」就任で前途に暗雲......
「イトウ違いではないのか」。6月末に発表された金融庁の新長官人事は、金融界をざわつかせた。続投と見られた栗田照久(1988年旧大蔵省)が長官在職わずか1年で退任。後任も最有力視された監督局長の伊藤豊(89年同)ではなく、企画市場局長を務めた井藤英樹(88年同)が抜擢されたからだ。井藤は「長官コースの王道」とされる監督局長経験がなく、金融界になじみのある人物とは言えない。米国の不動産向け融資を焦げ付かせ一時、経営危機が取り沙汰されたあおぞら銀行や、中小企業向け不良債権の膨張で実質国有化に追い込まれたじもとホールディングス(HD)など金融システム不安の芽が顕在化し始めた中、「制度屋」長官で果たして大丈夫なのかとの見方が出るのは当然であろう。
栗田周辺筋は「監督局長に伊藤を留任させたほか、銀行経営のモニタリングに関しては総合政策局長に就いた屋敷利紀(89年日銀入行、2015年金融庁に転籍)という〝達人〟がいる」と強調する。だが、その屋敷は、あおぞら銀や、じもとHD、海外債券投資で2兆円以上の損失を出した農林中央金庫など経営失策を見逃してきた「節穴官僚」(旧検査局OB)と後ろ指を指されているのが実態だ。省(庁)益拡大を最優先に、岸田文雄政権が掲げる資産運用立国構想に毒され、トップ人事さえ歪めた金融庁の様子に、先行き不安が募るばかりだ。
本命候補は接待スキャンダル
「監督・検査で手腕を発揮した人だけが長官に登用され、制度づくりに汗を流した人は軽視されるようなこれまでの人事慣行に違和感を覚えてきた」。栗田は井藤を後継長官に指名するに当たって、周囲にこう嘯いたという。
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