ZAITEN2024年09月号

自著紹介

雨宮処凛『死なないノウハウ 独り身の「金欠」から「散骨」まで』【全文掲載】

カテゴリ:インタビュー

『死なないノウハウ
独り身の「金欠」から「散骨」まで』
光文社新書/990円(税込)

あまみや・かりん 1975年、北海道生まれ。作家。反貧困ネットワーク世話人。フリーターなどを経て2000年、自伝的エッセイ『生き地獄天国』(ちくま文庫)でデビュー。06年からは貧困問題に取り組み、07に出版した『生きさせろ! 難民化する若者たち』(ちくま文庫)はJCJ賞を受賞。

「ラーメン一杯の値段で無敵になれた」「何かあった時のため、いつでも手に取れる場所に置いてある」  佐高さんとの対談でも触れて頂いた『死なないノウハウ 独り身の「金欠」から「散骨」まで』(今年2月出版)に、このような感想を多くいただいている。賃金は上がらず長引く物価高騰に庶民が喘ぐ中、令和6年のこの国に生きる人々の不安に答える情報を盛り込んだ一冊だ。 「働けなくなったら」「お金がなくなったら」「親の介護が必要になったら」「大病をしてしまったら」「家族や友人とトラブルになったら」「自分の死後のペットやスマホ、サブスクの解約は」などなどの6章からなる。  

 多くの人は、漠然と「まぁ、何か困ったことがあったら役所に行けばいいだろう」くらいに思っているかもしれない。が、残念ながらそのような認識だと「使える制度」にたどり着ける確率は低い。「メニューを見せてくれないレストラン」という言葉があるが、この国には素晴らしい社会保障制度がたくさんある。しかし、それを一字一句間違えずに伝えた人にのみ出てくるという窓口が多いのだ。「あなたにはこれが該当しますよ」と向こうから教えてくれることは残念ながら多くない。  

 そもそもあなたの抱える問題の管轄は、役所なのか労基署なのか年金事務所なのか、多くの人がそこからわからないし、それをナビゲートしてくれる公的制度もない(民間のナビゲート制度は本書で紹介している)。  

 役所絡みでなくとも、この国には「知らないと損すること」が溢れている。例えば職場の飲み会でコロナ感染すれば労災になるし、「仕方ない」と思われがちな外資系企業の解雇は日本の労働基準法を無視したものであれば無効。また、ここ数年大学生の2人に1人が奨学金の借金を背負って社会に出ることが問題となっているが、2020年からは「高等教育の修学支援新制度」という給付型奨学金制度が創設されている。最大で奨学金として年約91万円、授業料として約70万円、入学金として約26万円が支給されるものだが、なぜか高校や大学の先生でも知らない人が多い。一方、あなたに娘や姪がおり、夫からDVを受けて別れたいものの付きまとわれる場合などは「支援措置」という制度で戸籍や住民票の閲覧制限をすればいいし、DV加害者が捜索願を出すかもしれないなんて時は、警察に「行方不明者届の不受理措置」を出せばOKだ。 「親の介護」絡みでも問題は山積みだが、真っ先に行くべきところは「地域包括支援センター」。まずここに繋がらないと話は始まらない。  

 本書では、公的・民間の介護施設の平均月額と平均入居金、どのようなサービスかも細かく紹介しただけでなく、親の施設探しから納骨まですべてを代行してくれる家族代行業も紹介した。毒親はもちろん、遠方の親の施設探しに毎回付き合えないというのはビジネスマンなら当然だろう。そんな人たちが使えるサービスだ。また、「施設ガチャ」に外れないため確認すべきことも網羅してある。  

 それだけではない。自らの死後、スマホやパソコンが自動的にクラッシュされるサービスも紹介した。遺族をがっかりさせたくない方には朗報であろう。  

 ということで、そんな使えるノウハウを猛烈に詰め込んだ一冊。お守り代わりにぜひ、お手元に置いてほしい。

購読のお申し込みはこちら 情報のご提供はこちら
関連記事

銀座ママ座談会「文芸誌タブーの作家たちの酒とオンナの失敗談」

特ダネ記者「放言座談会」

【インタビュー】「ホンボシ 木原事件と俺の捜査秘録」元警視庁捜査一課 佐藤誠

【著者インタビュー】自民党と裏金 捜査秘話

雨宮処凛『死なないノウハウ 独り身の「金欠」から「散骨」まで』【全文掲載】

【特集】前川喜平「テレビの萎縮を放置すれば民主主義が破壊される」

佐高信 vs. 雨宮処凛「自民政治の無策が貧困問題の元凶だ」

「TABLO」編集長 久田将義「特殊詐欺と連続強盗 変異する組織と手口」

【著者インタビュー】実録ルポ 介護の裏

特ダネ記者「放言座談会」