ZAITEN2024年09月号
『自民党と裏金 捜査秘話』村山治
【著者インタビュー】自民党と裏金 捜査秘話
カテゴリ:インタビュー
『自民党と裏金 捜査秘話』
発行:日刊ゲンダイ
発売:講談社/¥1,700+税
むらやま・おさむ――1950年、徳島県生まれ。73年に早稲田大学政治経済学部を卒業し毎日新聞社入社。91年に朝日新聞社入社。東京社会部記者として金丸事件、ゼネコン汚職事件などの大型経済事件報道に携わる。2017年からフリー。著書に『特捜検察vs.金融権力』(朝日新聞社)、『安倍・菅政権vs.検察庁』(文藝春秋)、『工藤會事件』(新潮社)など。
―本書執筆の狙いを教えてください。
「令和のリクルート事件」とも呼ばれた自民党派閥の政治資金パーティーをめぐる政治資金規正法違反事件はまだ記憶に新しいと思います。
東京地検特捜部の捜査で、安倍派などが所属議員に割り当てたノルマ超過分のパーティ券収入を現金で議員に還流し、それを派閥や議員側が収支終始報告書に記載してこなかったことが判明した。
岸田政権の官房長官の松野博一、経産相の西村康捻、自民党国対委員長の高木毅ら複数の安倍派幹部について派閥の政治団体の収支報告書の不記載にかかわった疑いが浮上しましたが、特捜部は彼らの訴追を見送り、派閥の会計責任者と還流を受けた議員3人とその事務方を訴追して捜査の幕を引き、真相解明を求める国民の期待は空振りに終わりました。
今回の裏金事件も含め、検察が政治資金規正法で政治とカネの腐敗に挑んだ事件はいくつかありますが、その原点とも言える事件が今から32年前に起きた「金丸5億円闇献金事件」です。
当時の自民党最大派閥の「経世会」(竹下派)会長だった金丸信氏が、東京佐川急便から5億円もの現金を受け取り、派閥の議員60数人の選挙支援に使った疑いが浮上。特捜部は金丸氏を寄付の量的制限違反で罰金20万円の処分としましたが、金丸氏側が裏金の配布先については口をつぐんだため、他の議員への捜査はうやむやで終わりました。 この「金丸事件」と今回の自民党安倍派の裏金事件は検察の捜査が国民の期待するレベルの真相解明と責任追及をできなかった点がよく似ています。
疑惑の政治家に操作が及ばない〝ザル法〟に苦悩しながら、国民の期待に応えようと検察が問題提起した点は、通じるものがあります。
この2つの裏金事件を通して、この国の政治腐敗監視のあり方を今一度、考える好機だと思い、本書にまとめました。
......続きはZAITEN9月号で。