ZAITEN2024年10月号
橋本会長の壊れたブレーキ
日本製鉄のUSスチール買収「出たとこ勝負」の泥縄戦略の末路
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〈日本製鉄によるUSスチール買収計画は、米国内の鉄鋼労働者とその家族、米製造業を最優先に考えており、こうした取り組みに向けた大きな1歩だ〉
2024年8月4日、米紙『ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)』電子版にこんな寄稿記事が掲載された。執筆者はドナルド・トランプ(78)の大統領時代に中央情報局(CIA)長官や国務長官を歴任したマイク・ポンペオ(60)。今でもトランプと関係が良好で、直接電話で話せる数少ない側近とされる。
日鉄がポンペオとアドバイザー契約を結んだと内外メディアが報じたのは7月20日。WSJへの寄稿は初仕事だが、関係者が注目したのはそのタイミングだ。
1週間前の13日に米ペンシルベニア州バトラーで演説中のトランプが20歳の青年に狙撃された。耳を負傷しながら拳を突き上げて健在をアピールしたトランプは称賛を浴び〝神がかり的な存在〟として支持率が急伸。21日には、11月の大統領選の対立候補の現大統領ジョー・バイデン(81)が出馬断念に追い込まれ、世評はトランプの政権復帰が確実と大いに囃し立てた。もちろん、当事者の日鉄もその気になったに違いない。
「トランプ勝利」への大博打
老舗鉄鋼会社・USスチールの買収計画を日鉄社長(現会長)の橋本英二(68)が発表したのは23年12月。141億㌦(約2兆1000億円)という破格の買収費用をはじめ、全米鉄鋼労働組合(USW)や民主、共和両党有力議員の反発などリスクだらけの展望は、本誌24年3月号拙著〈日本製鉄「USスチールに2兆円」空中分解必至の無謀な「巨額買収」〉で詳報した。
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