ZAITEN2024年11月号

亡国の「JAグループ」

【特集】「令和のコメ騒動」で露呈した〝既得権益〟農政の破綻

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 真夏の日本列島を襲った「令和のコメ騒動」。スーパーの店頭から一時、コシヒカリやひとめぼれなどのコメが一斉に消え、消費者をパニックに陥れた。農林水産省は猛暑の影響による精米の収量減少やインバウンド(訪日外国人)拡大による需要急増を要因に挙げ「一時的な現象」と強調する。農水相の坂本哲志は9月以降の需給状況について「新米(2024年産米)の供給が本格化し、コメ不足は解消に向かっている。流通が円滑に進めば、価格水準も落ち着いていく」と嘯いたが、コメの店頭価格は足元で前年に比べて4~5割も跳ね上がっており、消費者の不安は一向に収まらない。  

 23年産米の作況指数は「101」と平年作以上で、かつてのコメ騒動時のような「凶作」ではなかった。にもかかわらず、コメが不足し、価格高騰が起きた背景を探ると、既得権益を死守したい農水省や農業協同組合(JA)グループ、自民党農林族議員による「鉄のトライアングル」が半世紀にわたって続けてきた「減反政策」に行き当たる。コメ価格維持・上昇に固執する歪な政策は、コメの年間生産量をピーク時(1967年、1400万㌧超)からほぼ半減(23年産で661万㌧)させた。この結果、猛暑やインバウンドの増加などで需給バランスがわずかに崩れただけで深刻なコメ不足を招来するほど、生産基盤の弱体化が進んだ。業界で「コメ農政の矛盾が一気に噴出した」(新潟県の大規模生産者)と国を指弾する声が上がるのも、むべなるかなだ。

備蓄米放出を拒否

「大阪府の調査では、約8割のスーパーなどでコメが品切れだ。政府には100万㌧の備蓄米があるのに、倉庫に眠らせておく方がいいという理屈が理解できない」。大阪府知事の吉村洋文は8月下旬の記者会見で政府に噛みついた。  

 こうした動きに農水相の坂本は、「(備蓄米を放出すれば)民間流通が基本であるコメの需給や価格に影響を与える恐れがある。慎重に考えるべきだ」と、にわかに市場の論理を持ち出して放出拒否の姿勢を貫いた。それどころか、コメ不足の原因について「在庫が最も少なくなる端境期の8月に南海トラフ地震臨時情報が発出されたり、台風が来たりして消費者による買い込み需要が発生した。輸送業者のお盆休みで商品の搬入に停滞が生じたことも響いた。皆さんには、必要な量だけお米を買い求めいただくなど、落ち着いた購買行動をお願いしたい」とまで言い放った。自らの失政を棚に上げ、消費者や流通業者に責任を一方的に押し付ける噴飯ものの発言だった。

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