ZAITEN2024年11月号
元広報部長の懺悔と提言
【著者インタビュー】『旧統一教会 大江益夫・元広報部長懺悔録』
カテゴリ:インタビュー
『旧統一教会 大江益夫・元広報部長懺悔録』
光文社新書/900円+税
ひだ・つよし―1952年愛知県生まれ。早稲田大学第一文学部卒業後、朝日新聞社に入社。高知支局、阪神支局を経て大阪社会部。大阪府警担当、朝日新聞襲撃事件取材班キャップを務めたのち、京都支局次長、地域報道部・社会部次長、和歌山総局長。朝日カルチャーセンター大阪本部長等を経て、朝日新聞社・村山美知子社主の大阪秘書役を務め、2017年12月退社。著書に『最後の社主―朝日新聞が秘封した「御影の令嬢」へのレクイエム』(講談社)、『彼は早稲田で死んだ―大学構内リンチ殺人事件の永遠』(文藝春秋)などがある。
―大江益夫さんはどういった人物だと考えますか?
2021年秋に静岡県伊豆市の川口大三郎さんの墓前で初めてお会いした時から、大江益夫さんの印象は変わっていません。誠実な人柄で、善意の人です。宗教者に多いタイプと言っていい。川口さんは1972年11月8日、早稲田大学のキャンパスで、革マル派という過激派の学生たちに拉致され、敵対党派のスパイと誤認されて、殺された学生です。墓参したのは、川口さんの50回忌法要の日でした。私は、事件を機に立ち上がった学生たちの革マル派糾弾運動を『彼は早稲田で死んだ』(文藝春秋)という本にまとめた直後で、この本を川口さんの墓前に供えました。大江さんも早稲田の原理研究会(旧統一教会の学生組織)時代の仲間たちと一緒に、同会と多少の縁があった川口さんの50回忌法要に出席していたのです。早大原理研の人たちは半世紀にわたり、墓参を続けていた。そのリーダーが大江さんでした。
大江さんは京都の山里の村で育ち、地元の高校に入ると、1年生の夏に友人に誘われて共産党系の青年組織、日本民主青年同盟の熱心な活動家になります。当時は正義感に満ちた少年でした。それが、なぜ、統一教会に入信したのか?
大江さんは高校2年生の夏、京大の原理研究会の学生との神の存在をめぐる論争に挑んで、負けたのがきっかけだったと述べています。唯物論が正しいと思っていたのに、論争の結果、神の存在を認めてしまった。だから入信した。いい意味でも悪い意味でも、彼は純粋な人だと思います。
実は、本書を上梓する前に、大江さんはゲラ原稿を自宅に押しかけてきた教団の幹部らに渡してしまいました。「(出版によって)教団を潰すつもりか」と詰め寄られ、「いや、教団の生き残りを願っての本だ。原稿を読めば、わかるはずだ」との思いで、渡したというのです。案の定というか、教団はゲラ原稿を読み込み、様々な難癖をつけ、出版差し止めを版元の光文社に求めてきました。光文社が出版に踏み切ると、教団のホームページ等で大江さんへの人格攻撃に満ちた文書を公表しています。
しかし、宗教団体とは思えないような品性に欠ける文言は、大江さんの人格の高潔さを際立たせるだけです。「教団はコンプライアンス(法令遵守)に徹する以外に生き残りの道はない」という大江さんの訴えは、旧統一教会の関係者だけでなく、社会にも大きな影響力を与えるはずです。彼の誠実な人柄こそが、本書の影響力の源泉なのだと思います。
......続きはZAITEN11月号で。