ZAITEN2024年12月号
【対談】佐高信の賛否両論
佐高信 vs. 福島みずほ「家父長制への回帰を望む自民党は許せない」
カテゴリ:インタビュー
ふくしま・みずほ―1955年、宮崎県生まれ。社会民主党党首。参議院議員。東京大学法学部卒業後、弁護士登録。98年社民党から立候補し、参議院議員に初当選。
佐高:NHKの連続テレビ小説『虎に翼』はNHKとしては珍しいドラマでした。
福島:憲法を真正面に据えて議論していましたよね。
佐高:虎に翼が大ヒットしたにもかかわらず、離婚後に父と母の双方が子どもの親権を持つ「共同親権」導入を柱とする改正民法が成立してしまった。虎に翼の主人公のモデルとなった三淵嘉子さんは特に無念ですね。
福島:三淵さんは家庭裁判所の創設にもかかわっていて、具体的な被害を知っているので、より残念だと思います。
佐高:共同親権の〝共同〟は本当の意味での共同ではないと思います。また、残念ながら、日本では男女の権利が対等だった歴史は浅い。共同という美名のもと、共同親権を推進したい人たちが共同という言葉をうまく使ったに過ぎません。
福島:私は今回の共同親権に反対の立場を取っています。離婚した後も相手の新しい家族に介入できるのですから、それは家父長制における父権介入です。最大の欠点は家庭裁判所で本人たちの同意なく、共同親権にできるということです。
佐高:家父長制への回帰を望んでいるのは、統一教会ですよね。彼らからすると、憲法24条の「両性の本質的平等」、14条の「法の下に平等」が邪魔で、共同親権を推進したい。国民民主党や日本維新の会も含めた改憲派は、〝統一教会ウイルス〟だと私は思っています。
福島:統一教会の憲法改正のパンフレットにも24条と14条の話はありました。しかし、民法学者の人でも共同親権に賛成している人もいるので、統一教会だけが共同親権を進めたわけではないです。 両親が離婚をしても子どもにとっては親であることには変わりありませんから、面接交渉はもちろん、養育費も払わないといけない。だから、共同親権と面接交渉や養育費は関係ないのですが、ここを混同している人が多い印象です。
佐高:選択的夫婦別姓も通さないような状況の中で、共同親権が通ってしまったのは問題です。
福島:おっしゃる通りで、抽象的な共同親権というのではなく、具体的にどうなるのかというところを認識している人が少ないように感じます。そもそも、子どものことも含めて、話し合いができないから離婚するのに、離婚した後に話し合いをするというのは実際の問題として困難です。
佐高:共同親権と養育費の問題は別ですが、養育費が払われてないケースも多いのですよね。
福島:養育費の取り立てや保証をしっかりやるなど、共同親権を認める前に、まずやるべきことがあると思います。
佐高:「金は出さないが、口は出す」ですね。
福島:家父長制に基づく父権介入という意味では、バックラッシュの一つにもなりかねない危険な法改正だと思います。
......続きはZAITEN12月号で。