ZAITEN2024年12月号

政財界主導の「大学改革」の正体

【特集】東大、京大、東北大...トップレベル大学の「破壊」が本格化へ

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 国内トップクラスの国立大学のあり方が今年10月以降大きく変わることを、いったいどれだけの国民が理解しているだろうか。  

 昨年12月に国立大学法人法が改正され、東京大、京都大、大阪大、東海国立大学機構(名古屋大と岐阜大)、それに東北大を運営する5つの大学法人が「特定国立大学法人」に指定された。最も大きな変更点は、最高意思決定機関と言える強い権限を持った「運営方針会議」の設置を義務付けること。組織は委員3人以上と学長で構成され、文部科学大臣の承認が必要になる。  

 国立大学では2004年の法人化や教授会を学長の諮問会議に格下げした14年の学校教育法改正以降、財界など学外者の意見の反映や、学長の権限を強化するさまざまな法改正が行われてきた。昨年末の国会で拙速に議論され、可決されたこの法改正は、国内トップ大学を政財界の意のままに動かすことを可能にするものだと、大学関係者は反対の声を上げていた。  

 さらに、これらの大学に世界最高水準の研究大学を目指すように仕向けるのが、国際卓越研究大学の制度だ。認定された大学には、政府が創設した10兆円規模の大学ファンドの運用益を配分されるとしている。このファンドは政府が1・1兆円を出資し、残りの8・9兆円は財政融資資金、つまり国からの借金で構成されている。23年3月に締め切られた第1回の募集には、東京大や京都大など10大学が応募したものの、東北大だけが候補に選定され、現在認定を待っている状態だ。  

 国際卓越研究大学には、最高意思決定機関となる合議体を新たに設置することが義務付けられ、学外者を中心に構成することが求められる。このガバナンスのあり方は運営方針会議と同じだ。むしろ、国際卓越研究大学に導入させる予定だった運営方針会議を、応募から漏れた国立のトップクラスの大学にも広げた形になっている。  

 これらの政策は文科省というよりも、政府と財界主導で持ち込まれたものだ。本誌でもこれまで22年6月号《10兆円ファンドを主導する「学者政商」の正体》や23年6月号《国際卓越研究大学に群がる「門外漢」の政商たち》などの記事で問題点を指摘してきた。

......続きはZAITEN12月号で。

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