ZAITEN2024年12月号

学者総裁を待ち受ける「股裂き状態」

植田日銀「金融正常化路線」を石破に託す〝音痴ぶり〟

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「脱アベノミクスの同志じゃなかったのか」。目先の株価に一喜一憂し、金融政策運営に介入してくる首相の石破茂の言動に、日銀内からこんな恨み節が漏れている。  

 石破は首相就任前には「金利は上げていかなければならない」と言明。自民党総裁選期間中も「日本経済にとって金利が健全に機能することが重要だ」などと、安倍晋三政権時代の異次元緩和政策に終止符を打った日銀に共感し、利上げによる金融正常化路線を支持する姿勢を示していた。ところが、総裁選出直後に「利上げ容認」「緊縮財政志向」に対する投資家の警戒感が株価急落を招いた「石破ショック」を目の当たりにした途端、手のひらを返したかのように利上げに異を唱え始めた。  

 首相就任翌日の10月2日には早速、日銀総裁の植田和男を官邸に呼び出し、会談後には記者団に対して「個人的には追加の利上げをするような環境にあるとは考えていない」と言い放った。これを受けて、市場では「追加利上げが遠のいた」(米ファンド関係者)との観測が広がり、株価が急反発する一方、円相場は急落し、輸入物価の高騰で家計や内需企業の経営を圧迫する懸念がぶり返している。目先の衆院選を「与党の過半数確保」で何とか乗り切っても来夏の参院選に勝てなければ、権力基盤が揺らぐのが必至な石破政権。首相は内閣支持率を左右する株価の動向に「戦々恐々としている」(官邸筋)というだけに、政治との折衝が苦手な正副総裁を戴く植田日銀は金融正常化路線を進められなくなる危機に直面している。

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