ZAITEN2024年12月号
月刊ゴルフ場批評86
「万木城カントリークラブ」批評
カテゴリ:月刊ゴルフ場批評
千葉県房総半島南部のいすみ市にある「万木城カントリークラブ」は、まさに城が名前の由来。
千葉県内の城と言えば、里見八犬伝にも登場する「久留里城」と、徳川四天王として名高い本多忠勝の居城「大多喜城」が有名だ。この万木城は古くは「万喜城」と書き、本多忠勝が大多喜城に入る前に一時的に居城にしていたといわれる。なかなか趣がありそうな場所だが、コース近くの「万木城跡公園」は、天守閣を模した展望台がひっそりと建っている。どこかもの悲しい雰囲気......。
それはともかく、同CCは首都圏で6コースを運営する「山田クラブ21」の傘下。6コースの共通株主会員制で、会員になればすべてのコースがメンバーフィでプレーできるうえ、年会費は1コース分のみとなっている。
しかも、6コースがバラエティに富んでいる。千葉が万木城CCと山田GC、南茂原CCの3コース。他は埼玉の平成C、山梨のレイク相模CC、茨城の日立高鈴GC。エリアが分かれているうえ、完全接待系の平成、レイク、アスリート志向の山田、万木城、その中間の南茂原、日立高鈴と、ゴルファーの好みやメンバーによって使い分けできるのはありがたい。
万木城CCがアスリート志向の理由はコースの難易度が高いから。距離がしっかりあるタフなホールが多く、アップダウンは極端ではないが、打ち上げ、打ち下ろし、傾斜地、谷越えホールなど多くのショットが要求される。
せま苦しく感じるホールは少ないが、左右は樹林帯にセパレートされ、曲げるとトラブル確実。
設計は井上誠一の流れを汲む名匠・富澤誠造氏。奇をてらったようなレイアウトは少なく、コンパクトな2グリーン。クラシカルな正統派の林間丘陵コースだ。
ハウス前には広々としたアプローチエリア、バンカー練習場が設けられ、離れてはいるがドライビングレンジも完備。「ガチ」ゴルファーには嬉しい限りだが、アベレージゴルファーでも敷居が高いわけではない。
クラブの雰囲気は至ってアットホーム。開場から約50年、くたびれ感のある施設と、ベテランスタッフの温かみのある接客が醸し出す「ふわっ」とした空気感が誰をも受け入れてくれそうなのだ。
ハウスの売店では地元産の野菜や旬の果物、新鮮な卵などが売られていて、農産物直売所かと感じるほど。こののどかさは接待ゴルフや「キラキラ感」を求めるゴルファーには向かず、純粋にゴルフを楽しみたい仲間同士の気軽なラウンドや、ひたすら腕を磨きたい上達志向の強いタイプにおススメしたいコースだ。
レストランの食事も味は及第点で、メニューの数も豊富なのはいいが、何とも地味。見た目の「御馳走」感が少なく、インパクトに欠ける。「これ美味そう」と思わせてくれるメニューがないのだ。南茂原のレストランは、目の前が大きな池で「キラキラ感」があったが、これも6コースのバリエーションの一つと思えばいいか。 「普段着コース」に徹底したコースは、他のグループコースと使い分ければそれなりに楽しそうだ。
●所在地 千葉県いすみ市作田2 ●TEL. 0470-86-3731 ●開場 1975(昭和50)年10月10日 ●設計者 富澤誠造 ●ヤーデージ 27ホール、1万616ヤード、パー108