ZAITEN2024年12月号
防衛産業は「第4の自衛隊」
【インタビュー】自衛隊の安定的な運用に貢献する防衛産業は「第4の自衛隊」
カテゴリ:インタビュー
『軍産複合体―自衛隊と防衛産業のリアル―』
新潮新書 /¥900+税
さくらばやし・みさ―1970年、東京都生まれ。日本大学芸術学部を卒業。アナウンサーやディレクターとしてテレビ業界で活躍。一貫して自衛隊関連の取材を続けている。著書に『誰も語らなかったニッポンの防衛産業』(産経NF文庫)など
今回、『軍産複合体―自衛隊と防衛産業のリアル―』(新潮新書)を上梓しました。これまで防衛産業については10年くらい前から執筆していましたが、当時は今以上に限られた予算の中で装備の調達をやっていたので危機的状況でした。防衛産業の納品先は自衛隊だけです。どうしても価格は高くなってしまい、経営が困難になり、企業の倒産や事業撤退という悪循環が続いていました。
規模が大きい「プライム企業」に対して、「ベンダー企業」の方に共通しているのは、自分たちの仕事でミスが起こると自衛隊が活動できなくなってしまうので、迷惑をかけたくないという純粋な気持ちを持っている点です。アメリカなどの防衛産業は、軍需品の製造だけで成り立っているような企業が多いです。防衛産業というと、いかにも武器を売って儲けているイメージですが、日本の場合は違います。日本の防衛企業は、企業の中の一部門でかろうじて自衛隊向けの仕事をやっているに過ぎません。大企業にもなると防衛事業の比率は数%くらいで、売り上げ比率も低いので、経営者でさえ全てを把握していないケースもあるのです。
防衛産業の企業を取材していて思うのは、人間的に魅力がある方が多いということです。防衛産業の仕事は、基本的な儲けにならないようなものも多く、営利主義だけでは務まりません。防衛産業の企業で働く方は、本人たちも自分たちがつくった軍需品を国外の戦争の現場で使われることは望んでいません。日本の企業は、基本的には民生品を作っている企業が軍需品を作っているので、「あの会社は武器を作っている」と後ろ指をさされることには耐えられませんし、自衛隊のために働いているという気持ちが強いので〝戦争のため〟という意識は薄いのです。
......続きはZAITEN12月号で。