ZAITEN2024年12月号
「2015年体制」が築いた悪夢
【インタビュー】世襲という病、裏金という腐敗
カテゴリ:インタビュー
『裏金国家 日本を覆う
「2015年体制」の呪縛』
朝日新書/870円+税
かねこ まさる―1952年東京都出身。経済学者。東京大学経済学部卒業。法政大学経済学部教授、慶応義塾大学経済学部教授などを経て、現在、淑徳大学大学院客員教授、慶応義塾大学名誉教授。著書に『高校生からわかる日本経済』(かもがわ出版)、『新・反グローバリズム』(岩波現代新書)など多数。
自民党の総裁選が告示された今年9月12日に合わせて、『裏金国家 日本を覆う「2015年体制」の呪縛』(朝日新書)を上梓しました。
私は、安倍晋三政権が国会で安保法案を強行採決した2015年9月が、従来から語られてきた「戦後憲法が掲げる平和主義への挑戦」という文脈を超えて、日本にとって重大な〝転換点〟だったと考えています。安倍政権が安保法制定により行使可能にした集団的自衛権は、歴代の内閣法制局長官が「憲法上許されない」と答弁してきたものです。そうでないと、自衛隊が「専守防衛のための組織」であるという理屈が成り立たず、現憲法下での正当性を失うからです。
そうした政府の憲法解釈を180度転換するなら、本来は衆参両院の3分の2の議員の賛成をもって憲法改正を発議し、国民投票で過半数に支持される必要がありました。ところが安倍政権は、単なる行政処分に過ぎない閣議決定により憲法解釈を変更し、国会で強引に可決してしまいました。私が「静かなクーデター」と呼んでいるあの日以来、曲がりなりにも法の支配に基づいていた日本の意思決定の仕組みは根底から変えられてしまいました。
それまでの日本では、重要な政策的な変更をするのであれば、その法的な正当性などについて丁寧に論戦を繰り返し、国民を納得させる必要がありました。しかし、「2015年体制」が作られて以後は、面倒な議論などをする必要がなくなりました。つまり、権力者がどんなに〝無能〟であろうと、その権力を行使できるようになったのです。
......続きはZAITEN12月号で。