ZAITEN2025年01月号
労基法違反企業を追い詰める 本当は怖い〝当局〟
【特集】労基署の本当の実力
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過労死や過労自殺をなくすため、国が実態調査を行い効果的な防止対策を講じることなどを定めた「過労死防止法」が2014年11月1日に施行されてから、はや10年。18年には「働き方改革」関連法が成立し、時間外労働の上限規制が初めて導入された。さらに同時期、人手不足が深刻化し労働市場が急激に売り手市場化したことも手伝って、日本人の労働観は大きく変化した。
長時間労働、サービス残業には文句を言わず勤しむことがサラリーマンの美徳であった時代は完全に終焉。違法な長時間労働の強制やハラスメントが人権侵害であり、サービス残業は従業員が当然得るべき賃金を使用者側が掠め取る窃盗に等しい行為だと、今や広く認知されるようになった。
電通事件と「かとく」
この流れを固めた大きなきっかけのひとつが、15年12月に電通でインターネット広告を担当していた、当時24歳の女性社員が過労の末に心身を病み自殺した「電通過労死事件」だったのは間違いないだろう。
この事件では東京労働局が、社員に違法な長時間労働をさせたうえ、勤務時間を過小に申告させたとして、法人としての電通に加え、女性社員の上司個人も労働基準法違反で書類送検した。
最終的に上司個人は不起訴(起訴猶予)となったものの、法人としての電通は17年10月に東京簡易裁判所が有罪判決を出しそのまま刑は確定。課された罰金自体はわずか50万円に過ぎず、電通にとって蚊に刺されるほどでさえなかったが、当時の石井直社長が引責辞任を余儀なくされたほか、経済産業省や厚生労働省、東京都などから軒並み指名停止措置を受けるなど、事件を通じて電通が受けた痛手は絶大だった。「モーレツ」ではあっても、華やかな印象の強い広告業界を代表する企業の劣悪な労働環境の実態が詳らかになったことで、電通のイメージは急激に悪化した。
......続きはZAITEN1月号で。