ZAITEN2025年01月号
反省しない社風
【特集】ニコン「労基署勧告」に関係者死亡の闇
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2000年代初頭までデジタルカメラ、半導体製造用の露光装置(ステッパー)という2つの製品で圧倒的な世界シェアを持ちながら、デジカメはスマホ普及による需要激減、ステッパーに関しては05年にオランダの企業ASMLとの技術力競争に惨敗し、業績を支えてきた2本柱がいずれも不振に陥って久しいと言われるニコン。
今年4月1日には三菱UFJ信託銀行出身の徳成旨亮が取締役兼副社長執行役員から代表取締役兼社長執行役員に昇格。21年には金属3Dプリンティングを行う米国の企業「モーフ3D」社を子会社化するなど生き残りを模索していたが、そのニコンの熊谷製造所において、重大な労務問題が起きていることが分かった。
熊谷製作所は、同社の主力であるステッパーの開発から製造までを一貫して手掛ける拠点にして、現在はデジカメやステッパーに代わる主力事業を模索する「次世代プロジェクト本部」の中心地。前述の金属3Dプリンターのほか、素材の表面にレーザーで鮫の肌のような微細な溝を形成し、航空機や風力発電のブレードなどの摩擦抵抗を低減する「リブレット加工」など、ニコンが社運をかけている次世代ソリューションの多くは、ここで開発されている。
ところがその熊谷製作所では、自社の勤怠管理システムで従業員に出退勤時刻を記録させる一方、少なくとも一部のエンジニアにその時間を過小に申告させており、PCの起動時刻およびログオフ時刻によって分かる実際の労働時間とは月あたり数十時間もの乖離が生じていた。本誌が入手した資料によれば、今年夏まで熊谷製作所に勤務していた元エンジニアA氏の場合、表向きの残業時間は毎月50~80時間以内に収まっていたが、実際にA氏が残業した時間は月150~200時間。厚生労働省が「過労死ライン」(脳や心臓疾患、精神障害などの身体障害や精神障害によって死亡につながるリスクが高まる時間外労働時間の目安)として定めている「月80時間」を大幅に超えていたのみならず、労基法が長時間残業抑止の観点から課している時間外手当の支給まで不当に免れていた。
以上の労基法違反を受けて、熊谷労働基準監督署では今年6月19日付でニコンに対し是正指導を行っているが、これを以て「一件落着」というわけには全くいかない。というのもニコン熊谷製作所においては、過去20年以上にわたって、複数名の従業員が業務を通じて命を落としている疑いがあるからだ。 隠匿される〝死亡案件〟 なかでも確実かつ有名なのは、当時23歳の派遣社員B氏が、1999年3月に寮の中で自ら首を吊って亡くなった事件だ。
......続きはZAITEN1月号で。