ZAITEN2025年01月号
データ改竄発覚も〝防衛費バブル〟でハイテンション
IHI「止まらぬ統治不全」
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11月7日、IHIの株価が急騰した。5日の米大統領選で共和党ドナルド・トランプが圧勝。日本への防衛費拡大圧力が増すとの思惑から「国防株」の代表銘柄として買いが集まった。同社株価はこの1年で3・2倍に上昇。東京湾岸の広大な土地の含み益から「ウォーター・フロント銘柄」と持て囃されたバブル期を彷彿とさせるが、実態はお寒い限り。経営陣は戦略にブレが大きく、赤字転落や不正行為が頻発。信頼度が地に堕ちた会社なのだ。
株価急騰のきっかけはもう1つあった。11月6日同日午後1時に発表した2025年3月期通期業績の上方修正。前期は、開発に参画するプラット&ホイットニー社(P&W)製の航空エンジン「PW1100G」を巡る異物混入問題で、IHIは事業への出資割合(15%)に応じ、納入先への補償費用などで23年4〜9月期に1583億円の営業損失を計上、その影響で前期通期の最終損益は682億円の赤字に転落していた。
今期はP&W絡みの損失が解消し、世界的な航空機回復を背景に、営業損益見通しが1250億円(従来予想1100億円)と空前の高水準に達する見通し。
おまけに前首相の岸田文雄が打ち出した防衛費増額(23〜27年度の5年間で従来比1・6倍の43兆円)路線の恩恵で、ロケット弾システムなど防衛装備品の受注が絶好調。同社は昨年9月、約550人だった防衛部門人員を100人増員する計画を発表したが、3カ月後の同12月には200人上乗せし、総勢850人体制とする大掛かりな防衛部門の人員拡大計画を打ち出していた。
こうした流れから、23年11月1日に2902円だった株価はみるみる上昇し、今年2月に3000円台、7月に5000円台と駆け上がり、10月2日には8210円と1991年2月末以来およそ33年7カ月ぶりに高値を更新した。
この時も、前日に防衛タカ派の石破茂が第102代内閣総理大臣に就任。兜町界隈では「防衛装備品のビジネス規模は今後3年で倍増する」(外資系証券アナリスト)といった「国防株押し」の観測がしきりに飛び交っていた。
次々に改竄発覚
だが、株価が上昇気流に乗ったこの期間、IHIは「ものづくり企業として極めて深刻なスキャンダル」(重工業界関係者)に見舞われていた。
......続きはZAITEN1月号で。