ZAITEN2025年01月号
資産運用立国も笑い種
東証インサイダー取引疑惑「職業倫理大崩壊」
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公正な市場取引を守る立場にあるはずの「番人」が、職権で手に入れた上場企業の未公開情報を悪用して「濡れ手で粟」の利益を得ていた。東京証券取引所の社員がインサイダー取引をした疑いで証券取引等監視委員会から強制調査を受けた「前代未聞のスキャンダル」(大手証券幹部)である。
東証の親会社である日本取引所グループ(JPX)は個人の「犯罪」に矮小化し、幕引きを図ろうと躍起だが、市場関係者の間では「日本の資本市場の根幹を揺るがす事態だ。東証やJPXトップの引責辞任に発展してもおかしくない」(海外投資ファンド幹部)との声も出ている。
疑われる隠蔽体質
インサイダー取引を巡っては、最高裁から金融庁に出向していた裁判官も同じく職権で未公開情報が入手できる立場を悪用して不正な株取引を繰り返し、監視委の強制調査を受けていたことが分かっている。こちらは親元の最高裁と出向先の金融庁が管理責任を巡って責任を押し付け合う泥沼の様相だ。「職業倫理の大崩壊」とも言うべき投資家の不信を極める重大事にもかかわらず、危機感が乏しく保身に汲々とする「市場の番人」や「規制当局」の醜態ぶりに開いた口が塞がらない。
「この不祥事で(株式市場を巡る好循環が)全部瓦解するかというとそんなことはない」。10月29日に開かれたJPXの定例記者会見。最高経営責任者(CEO)の山道裕己(1977年野村証券)は、投資家の不信感の高まりを指摘したマスコミの質問にこう逆ギレした。
会見冒頭では「上場会社をはじめ関係者の皆様にご迷惑、ご心配をお掛けしていることをお詫び申し上げる」と謝罪したが、あくまで目線は上場企業に向けられ、本来、真っ先に口にしなければならないはずの個人投資家への明確なお詫びの言葉はついぞ聞かれなかった。
山道は会見で「市場の信頼を損なう行為であることは間違いない」などと、監視委が強制調査に踏み切った深刻な事態にもかかわらず、自らの非を真正面から認めないような中途半端な言い回しに終始。自身の経営責任についても「現時点では何とも申し上げられない」と言い淀むばかりだった。投資家の信認を失墜させたことを反省するどころか、「一部の不届き者がしでかした行為に、最高トップの自分が何でわざわざ謝罪しなければならないのか」とでも言うような思い上がった態度さえ感じられた。
......続きはZAITEN1月号で。